紀元前18世紀にバビロニアで制定されたと言われているハンムラビ法典には、「目には目を、歯には歯を」という記述があったとそうです。

 これは、たとえば、他者の目を傷つけた加害者は、自らの目も同じだけ傷つけられなければならない、という考え方で、一般に同害報復と呼ばれる原則です。この意味で、この考え方は復讐を正当化していると言えます。

「目には目を、歯には歯を」
復讐の善悪をどこで判断する?

 ただし、重要なのは復讐に上限を定めている、ということです。たとえば「私」の目を傷つけてきた加害者が、どれほど憎たらしかったとしても、正当な復讐として認められるのは、その加害者の目を傷つけることだけであり、命までをも奪ってはいけません。

 この考え方に従うと、復讐がそれ自体で悪いこと、というわけではなさそうです。どちらかと言えば、そこでは正しい復讐と正しくない復讐が区別されているのです。

 私が子どもの頃に通っていた空手の道場の師範は、大変な人格者でした。彼はよく、たとえ誰かから叩かれることがあったとしても、君たちはその人にやり返してはいけないよ、と言っていました。