エネルギー分野における変遷と今後の動向
再生可能エネルギーやガス火力発電などのエネルギープロジェクトにおいては、プロジェクトファイナンス(PF)での資金調達が選好されてきた。設備投資が多額となることや、社会インフラとしての必需性により収入の安定性が見込みやすいことなどが理由である。
日本のPF案件は1998年の中山共同発電(火力発電)プロジェクトに始まった。2012年に開始した固定価格買取制度の後押しを受けた大型の再生可能エネルギープロジェクトの多くも、PFでの資金調達を実現してきた。PFは日本のエネルギーインフラの構築に大きな役割を果たしてきたといえる。
足元では、新たな分野・領域での資金需要が期待され始めている。例えば、日本におけるGX(グリーントランスフォーメーション)実現に不可欠な分野として、水電解装置、浮体式等洋上風力発電設備、ペロブスカイト太陽電池、燃料電池が、経済産業省のGXサプライチェーン構築支援事業に指定されており、今後の事業化が期待される。
また、再生可能エネルギーの導入が拡大しているが、発電量を適時・適量にコントロールすることが性質上困難である。そのため、需給調整弁としての系統蓄電池の導入や、地域をまたぐ送電網としての地域間連系線の整備・強化の必要性が増している。こうしたことから、発電設備に限らない資金調達需要も生じ始めている。特に国内における地域間連系線の今後の必要投資額は6兆~7兆円(注)と見込まれており、エネルギー分野においてPFが果たし得る役割は引き続き大きいといえよう。