巨人と中日が最終戦で優勝を争った
1994年「10.8決戦」の今中投手

 巨人と中日が、お互いペナントレース最終戦で優勝を争った1994年「10.8決戦」。中日の先発は左腕・今中慎二投手でした。

 150キロ級のストレートと90キロ前後の大小2つの超スローカーブの緩急で打者を翻弄しました。何より投球間隔が短く、テンポがいいのです。ちぎっては投げ、ちぎっては投げ……。打者に考える隙を与えません。われら球審のリズムものせてくれます。

 ただ、バッテリーを組んでいた中村武志捕手は、際どいところを「ボール!」とジャッジされると、「入っていませんかね?」という感じで、名残惜しそうにミットをしばらくそのまま止めておくのです。ボールだと、星野仙一監督時代は怒られたのでしょうか(苦笑)。

 一方、マウンド上の今中投手は「ボール球の判定ならボール球でいいから、早く球を戻してください。次の球を早く投げたいんです」という表情でしたね。たとえるなら、信号機がない高速道路を走るような感じでしょうか。表現が適切かどうか分かりませんが、信号待ちで何度も停まるより、信号機がない高速道路を(スピードは別にしても)走るほうが快適ですよね。今中投手は、投球リズムを大切にして投げるタイプと見受けました。

今中慎二
●1971年3月6日生まれ、大阪府出身。182センチ、73キロ。左投げ左打

●大阪桐蔭高→中日(1988年ドラフト1位~2001年)
■通算12年=233試合91勝69敗5セーブ、防御率3.15
■最多勝1度、最多奪三振1度
■沢村賞1度、ベストナイン1度、ゴールデングラブ賞1度、オールスター出場4度