ノジマが買収しているのは
「オワコンビジネス」ばかり
そうなると家電量販大手のノジマもなかなか苦しくなるように思えるかもしれませんが、近年のノジマは非常に興味深い形で再成長をしています。そもそもノジマでは家電販売の売上比率が4割を割っています。異業種の買収が進んで、収益の多角化が進んでいるのです。
そしてここが一番興味深い点なのですが、ノジマが買収を進めた買収企業のポートフォリオが実にオールドファッションなのです。
現在、家電販売事業を超えるノジマの収益源となっているのが携帯販売事業です。これは携帯ショップ大手のITXとコネクシオを買収した結果なのですが、そもそも携帯ショップ自体が世の中ではオワコンになると噂されてきたビジネスです。
実際に最近、携帯販売業界では日本テレメックスやアミックテレコム、トーツーなど携帯電話ショップの大手運営会社が経営破たんしています。キャリアショップ最大手のドコモショップは店舗数3割削減を打ち出していて、今後も業界全体でショップの数は減少していくと予想されます。
さらにノジマは2017年に富士通の子会社からインターネット事業のニフティを買収しています。インターネットのプロバイダも社会インフラとしては必須の存在ではありますが、成長期は終わったビジネスだと考えられていました。それでもノジマが買収した後、ニフティの契約数は4年半ぶりに100万件台に乗せています。
もうひとつノジマの買収ポートフォリオで目を引くのが衛星チャンネルの買収です。ドラマチャンネルのAXN、映画チャンネルのザ・シネマに加えて、今年はVAIOと同じくソニーグループだったアニマックスとキッズステーションがノジマのポートフォリオに加わっています。
こうしてみてみると、ノジマの戦略を一言で言えば、「オワコン集まれ!」という陣容です。
斜陽の家電販売店事業に加えて、携帯各社が販売インセンティブを減らそうと動いている携帯ショップ、業界全体での加入増は見込めない光インターネット、視聴者が動画配信へと移行中の衛星アニメチャンネル、そして今回のノートパソコンといった形で世の中のオワコンとされるビジネスを中心にノジマの買収ポートフォリオが成長しているのです。
しかし、経営戦略という視点でみると、このノジマのオワコン買収戦略は実は合理的なのかもしれません。後編『「オワコンなのに、なんで?」ノジマがVAIOを買収する超合理的な理由』では、ノジマの風変わりだけど合理的な戦略について深掘りします。