「アリとキリギリス」の
キリギリスになるべし

 みなさんがよく知るイソップ童話「アリとキリギリス」は、原作だと「セミとアリ」なんですよ、知っていましたか。

 セミというのは暖かい地方にしかいないため、北の国にはなじみが薄い、そこで話をわかりやすくするためにセミをキリギリスに変えたバージョンが、一般に普及したのです。

 原作の題名は「セミとアリ」なのですが、内容はほぼいっしょで、夏の間、うたって過ごしていたセミが、冬になり腹をすかせ、アリのところになにか食べ物を恵んでくれないかと頼みにいく。するとアリはセミをあざ笑い「夏に歌をうたっていられたのなら、冬は踊りを踊っていらっしゃい」と言って追い返すという、そういうお話です。

書影『自立からの卒業』(現代書館)『自立からの卒業』(現代書館)
勝山 実 著

 キリギリスにせよ、原作のセミにせよ、暖かい季節は歌をうたって過ごしていました。将来を心配して陰気に落ち込んで、くよくよ悩んでいたりなんかしていません。

 私はそこを見習いたいと思う。

 私もあなたも、セミであり、キリギリスなのです、アリのように働いてもいないのに、いっちょまえに将来の心配なんてしている場合ではありません。

 とにかくいまは歌をうたいたまえ。アリが働いているその横でバイオリンを弾きたまえ。悩むのはそのあとでよろしいのですよ。