「日本の高学歴」が「フィンランドの低学歴」になる残念な理由フィンランドは高学歴化しており、会社勤務や政治家でも修士以上の学位を持つ人は多い(写真はイメージです) Photo:PIXTA

子どもの将来のため、教育に頭を悩ませている親や教育者は少なくありません。フィンランドと日本、両方で子育てを経験した岩竹美加子氏は「フィンランドの教育は質が高くてシンプルだ」と話します。岩竹さんの著書『フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養』(青春出版社)から、その教育の特徴、そしてフィンランド独自の授業『人生観の知識』について、抜粋して紹介します。

塾も受験もない

 フィンランドに塾はない。学校が充分な教育を提供するので、必要がない。また、勉強だけではなく遊びや休息、睡眠とのバランスの取れた生活が重視される。日本のような受験がないことも、塾がない理由だろう。

 フィンランドは小中一貫で、高校入学は同じ自治体、または隣接する自治体の希望校に出願する。選考の基準になるのは中学の成績で、基本的に受験はない。例外は、音楽高校を希望する場合などで、実技などの試験がある。大学入学には試験があり、そのための勉強はするが、日本のような受験勉強はない。

 一方、日本では受験のため、あるいは学校教育の不充分さを補うために塾に通う子どもが多い。学校が終わると夜遅くまで塾で過ごし、学校と塾の二本立てが起きている。それは、公教育の意味と機能を疑わせるものでもある。また、勉強ばかりの生活になって、遊ぶ時間や睡眠時間、何もしないでいる時間を失ってウェルビーイングに欠ける生活スタイルである。

 最近、日本では大学入試が多様化して、推薦や総合型選抜(旧AO入試)が増え、一般試験での大学入学者は5割を切ったという。その反面、特に東京で中学受験が増えている。つまり、受験の低年齢下が起きていて、小学生が良い私立中学入学を目指して猛勉強している。

 受験は産業であり、ビジネスでもある。学ぶことや知ることの喜びとは関係ないことに、親も子も心身を削っているのだ。