池田 偉い先生ほど、意見を変える柔軟性があるよね。大森荘蔵っていう哲学者の先生がいらして、「大森荘蔵先生を囲む会」という研究会をやってて、僕も中島義道(哲学者、作家)に誘われてこの会に参加していた。
大森先生が最新の自分の論文を弟子たちに配って、それをみんなで検討するんだけど、「大森先生、ここ違うんじゃないですか」とか「これは間違ってますよ」とか、弟子たちが言いたい放題なの。大森先生が一生懸命反論する姿を見て、これって「大森先生をいじめる会」じゃないのかって思ってた(笑)。
「首尾一貫」が価値になると
途中で意見を変えられない
池田 だけど、大森先生は時々じっと考えた後、「あなたのおっしゃることのほうが正しいかもしれませんね」って言うんだよ。俺、本当に偉い先生だなと思った。弟子にやり込められて「あなたの意見のほうが正しいかもしれない」って言える先生はそんなにいないよ。だから、みんな大森さんのことを尊敬してたんだと思う。頭が柔らかくて、すごいなって思った。
南 すごいですね、そういう人なんですか。偉い先生ですね。首尾一貫って、それ自体が価値になっちゃってますよね。だから、途中で間違ってるかも、と思っても変えられない。