Photo:Sipa USA/JIJI
7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では政策金利の据え置きが決まった一方、3人の地区連銀総裁が利上げを主張した。中間選挙を前に政策金利を動かしにくいなか、ウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長はタカ派的な情報発信によって市場の実質金利を高止まりさせ、株安による逆資産効果を通じてインフレを抑えようとしている可能性がある。その政策意図と市場への影響を読み解く。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
金利据え置きを決定も
利上げ派3人が反対票投じたFOMC
7月28、29日に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)においては、大方の市場参加者の予想通り、政策金利の据え置きが決定されたが、クリーブランド連銀のハマック総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ダラス連銀のローガン総裁の3人が利上げを支持し、政策決定に反対票を投じた。
6月のFOMCにおけるDot Plots(メンバーのフェデラルファンド金利見通し、いわゆるドットチャート)では18人の投票者のうち9人が年内利上げを示唆し、そのうち6人が複数回の利上げを主張した格好となっていたのだが、3人の地区連銀総裁が早速7月に利上げを訴える形となった。
ただ、足元のFOMCメンバーの構成を考えると、「タカ派の地区連銀総裁」が例年以上に多いのが特徴だ。6月に「18人のうちの9人が利上げを支持した」ことについては、地区連銀総裁が多数を占めていた可能性が高く、つまり、6月時点で据え置きを示唆していたメンバーの多くは「執行部」であったと推察される。
FOMCの投票権については、合計12人のうち、議長を含む理事7人とニューヨーク連銀総裁、そして残り11地区から選ばれる4人の地区連銀総裁が保持しており、換言すれば、12人中の8人は「執行部」である。
6月時点で利上げに慎重であった「執行部」が今回も政策据え置きを支持し、他方、タカ派的な地区連銀総裁のうち3人が利上げを支持したというのは、ある意味予定調和であったのだが、トランプ米大統領は「FRB理事会は政治的で、金利を高く維持しようとする」との発言を行った。
ただ、実際には、ウォーシュ議長以下の執行部が政治的な配慮で拙速な利上げを控えたものと考えられる。9月には利上げ、との市場参加者の声も聞こえてくるが、9月ともなれば、いよいよ中間選挙直前となってくる。
政治的にはますます神経質にならざるを得ず、原油高の「明確な二次的効果≒サービス物価等への明確な波及」や「インフレ期待の大幅上昇」などがない限り、9月FOMCでも利上げが見送られる可能性が高いといえそうだ。
次ページでは、米国債のイールドカーブの現況を分析しつつ、ウォーシュ議長のインフレ抑制に向けた狙いを検証する。







