オリンパス社長が違法薬物購入疑いで辞任、ビジネスに波及する「深刻な懸念材料」Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 古代ギリシャ神話に登場する12神の住まう聖なる山「オリンポス」の名を決定的に汚す前に、本気で社名を返上・変更すべき会社のようである。内視鏡のパイオニアで日本を代表する医療機器メーカー・オリンパスが、またもややらかした。23年4月から同社社長CEOを務めてきたシュテファン・カウフマン氏が、違法薬物を購入・所持していた疑いにより10月28日付で辞任し、前社長の竹内康雄会長が暫定CEOに就く珍事を引き起こしたのだ。ヘルスケア企業を司るトップが「薬中」状態で経営に当たってきたという驚愕の事実には、不祥事には慣れ気味となっていたマーケットもさすがに驚き、同社の株価は2800円台半ばから2600円台後半へと一気に下がった。

 カウフマン氏の今後に関しては、語るまでもなく司直の手に委ねられることになる。塀の中に落ちるか、流通ルートを白状するといった司法取引に持ち込み本国ドイツへ帰るか。いずにせよ彼個人が追う責任だ。しかし、より大きな問題はオリンパスという会社の行方だろう。「技術は毀損したわけでないから大丈夫だ」「社長の問題であって、社員が問題であったわけではない」などといった声が一部で出ている。それは、ある面で事実なものの、コアテクノロジーや現場の健全性が担保されてさえいれば国際競争を勝ち抜ける、という時代でないのは総合電機の一角を占めた東芝の凋落劇がよい例だ。

 歴代社長による粉飾決算が明るみに出たのを嚆矢に、法外な値段で買収した米ウエスチングハウスが引き起こした巨額損失、アクティビストらに対抗するために経済産業省とつるんだ株主総会への裏工作などなど、ボードメンバーによる不正と失敗の積み重ねによって23年12月をもって上場廃止に追い込まれた。同社グループが掲げる「人と、地球の、明日のために。」という企業理念の実態は、“保身と身内と今日だけのために”に過ぎなかったという影響は大きく、事業ポートフォリオは発電や鉄道、IT、パワー半導体程度にやせ細った。この結果、本社は川崎市へと都落ちすることが決定。4000人規模の人員リストラを経ても経営は、持分法適用のメモリー子会社キオクシアホールディングスの業績に決算数字が左右される不安定が続いている。