ジェネリック医薬品メーカーの小林化工は2021年、品質不正問題による行政処分を受けた。これを受けて親会社のオリックスから送り込まれた外様の社長は、健康被害を出すまでに至った品質不正問題の根底にあるものを目の当たりにした。特集『薬不足はいつ終わる?ジェネリック再編』(全6回)の#1では、小林化工で綿々と受け継がれてきた「パワハラ文化」が未曽有の品質不正を引き起こした経緯に迫る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
健康被害200人以上の品質不正
問題の本質は「パワハラ文化」
薬の供給不足が叫ばれるようになってから約3年。風邪・インフルエンザシーズンを前に、医師や薬剤師たちが「薬がない」とぼやくのも、もはや冬の風物詩と化してきた感さえある。
保険適用されている約1万6500品目のうち、出荷調整(限定出荷や出荷停止など、通常の出荷状態ではない)で手に入りにくくなっている薬は2割弱の3066品目(日本製薬団体連合会「医薬品供給状況にかかる調査(2024年9月)」)。中でも、特許が切れた新薬と同等の有効成分で作られたジェネリック医薬品(後発薬)は、全体の24.2%の品目で出荷調整となっている。
後発薬は、今や国内で処方されている薬の約8割を占め、供給不足は国民の命と健康に直結する問題だ。供給不安の発端となったのが、後発薬メーカーである小林化工の品質不正問題だった。20年、同社が製造した抗真菌剤イトラコナゾールに睡眠誘導剤が混入していたことが発覚。200人以上の健康被害を出し、薬機法違反で翌21年に過去最長となる116日間の業務停止命令と業務改善命令、二つの行政処分を受けた。
その後も後発薬関連企業を中心に、他の医薬品企業でも行政処分事案が相次いだ(下表参照)。そして多くの薬で出荷調整ドミノが発生したことにより、今日まで薬不足が続いているというわけだ。
小林化工は行政処分を受けた後の21年5月、親会社のオリックスの命を受けた弁護士の田中宏明氏を社長に迎えて再建を目指したが、23年に医薬品製造販売業許可が廃止され、事実上、事業を停止するに至っている。
外様の田中氏が小林化工の内部に入って見たもの、それはおぞましい「パワハラ文化」の爪痕だった。次ページでは、その全貌を明らかにする。