高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図#10Photo:Shannon Fagan/gettyimages

成長の源泉だった中国市場の失速や世界的な医療財政の悪化など、厳しい環境の中でも成長を続けられる医療機器メーカーはどこか。特集『高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図』(全19回)の#10では、今後5年間の医療機器セクターの論点を解説しつつ、新社長で「過去の延長線上にない成長」を目指すテルモ、復活を目指すオリンパス、第二の柱を構築中のシスメックスなど主力企業を分析。ニッチ市場で成長を狙える企業とこのままでは厳しい企業も、具体名を挙げて解説する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

成長をけん引した中国が失速
インフレ転換で優勝劣敗が加速へ

 新型コロナウイルスの感染拡大以前は、中国の成長や先進国の高齢化が追い風となり、高成長を続けていた医療機器セクター。景気変動にも強く「ディフェンシブグロース株」として株式市場の評価も高かった。

 だが、コロナ禍が落ち着いて以降も勢いは戻らず、株価も2021年をピークにTOPIX(東証株価指数)を下回って推移している。

 まずは医療機器セクターの足元の強弱材料を紹介しておこう。強気材料は、インフレ転換により国内でも「値上げ」ができる環境に変化したことだ。

 一方、注意したいのは中国市場の失速だ。UBS証券の葭原友子アナリストは、中国市場の成長率が鈍化傾向の中、追い打ちをかけるように中国政府による三つの政策が逆風になっていると指摘する。

 三つの政策とは、国主導で機器を大量購入して価格を抑える「集中購買」、現地製品の購入を推進する「バイチャイナ」、贈収賄を防止するための「反腐敗運動」だ。

「足元は、医師の腐敗を防止するための取り組みにより、病院の設備投資が調整している。設備更新の買い替えニーズはいずれ出てくるだろうが、中国比率が高い企業に対する逆風は少なくとも夏ごろまで続く可能性がある」(葭原氏)

 野村證券の森貴宏アナリストは、5年軸で期待できる会社の条件を「アクティブな打ち手を取れる会社」だと指摘する。

「医療財政の厳しさが変わらない中、インフレに突入したことで優勝劣敗が加速する。国内でも値上げできる環境になる一方、非効率な製品は採用されなくなっていくからだ。値上げや収益改善など自律的変化を打ち出せるかどうかが分かれ目になる」(森氏)

 次ページではトップアナリスト3人が考える、今後5年間の医療機器業界の「強い企業」を明かす。

 社長交代で成長が加速しそうな企業は?事業領域を拡大して2桁成長が継続しそうな企業は?具体名を挙げて理由と共に詳述。加えて、ニッチ市場で成長を狙える3社と、このままでは厳しい2社も企業名を挙げて解説する。

図版サンプル