しかし、こういう都合の悪い話は、大手メディアは真っ正面から取り上げない。取り上げたとしても極めて小さく、「国連特別報告者からこんな指摘はありましたけれど、記者クラブってのは素晴らしい機能もあるんですよ」なんて感じでお茶を濁すのが常だ。

「ネットやSNSでは斎藤氏を擁護するような主張もありますが、すべては裏取りできない怪しい話なんですよ」という感じでスルーする姿と丸かぶりだ。

 冒頭で紹介した「メディアの敗北宣言」をした宮根さんは番組内で「敗因」をこんな風に分析した。

 テレビや新聞は平等性、ファクトチェック、プライバシーなどいろいろなことを考えてニュースにしているが、SNSは「そういうのをポーンと飛び越えちゃう」というのだ。

 おっしゃる通りだと思う。しかし、テレビや新聞がしっかり裏取りもせずにポーンと飛び越えて発信しているものもあるではないか。

 文春記者がどのような取材をしているか知らないくせに「文春によりますと」と週刊誌報道を根拠に、大手メディアがあれやこれやと論評する姿を幾度となく目の当たりにしてきた。

 これも「文春砲」という権威に弱い大手メディアならではの雑な飛び越えではないか。

 なぜ大手メディアが報道の信頼を担保していると胸を張る記者クラブが、海外のジャーナリストたちから批判されているのか。なぜこんなにも一般庶民はマスコミを一方の意見しか取り上げていないと感じているのか。

 自分たちの考えと合わない人々を「狂気」「愚か者」と見下すような姿勢をあらためない限り、メディアの「連敗」はまだまだ続くのではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

まさかの斎藤氏再選でテレビは“お通夜”状態…それでもマスコミが「偏向報道」をやめられない“オトナの事情”とは