親が相続対策しないまま亡くなると、残された家族や子どもは、膨大な手続きに苦労したり、争族に巻き込まれたり、相続税が払えなかったり…と、多大な迷惑をこうむります。本連載では、知識のない親御さんでも、ステップ式で5日で一通りの相続対策ができる『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)を出版した税理士の板倉京さんが、最低限やっておくべき相続対策のポイントを本書から抜粋して紹介していきます。
知らない間に対象者になっている可能性大!
皆さんは、ご自分の財産に相続税がいくらかかりそうか知っていますか?
「相続税? うちには関係ないな」と読み飛ばそうとしている方、「ちょっと待った!」です。
国税庁の「相続税の申告事績の概要」では、2022年に亡くなった人のうち、相続税の課税対象となった人は15万人超で、亡くなった人のうちの9.6%。地価や株価の上昇等をうけ、相続税の対象となる人は増え、今や10人に1人が相続税の対象となっています。
特に都市部の地価は上昇率が高いため、東京23区のみでいえば、5人に1人が相続税の対象です。親から相続したり、昔に買った土地がある、という人は知らない間に財産額がふくれあがっている可能性もあります。
相続税は対策しないと「恐ろしい税金」
言わせていただければ、皆さん相続税に無防備すぎます。
相続税は放っておくと怖い税金です。親から相続した土地の相続税を払うために、身ぐるみはがされた子どももいます。そこまで大事にいたらないとしても、相続税がかかるかどうかを事前に確認し、対策しておくメリットは大きいです。
相続税は、死亡した人の財産にかかりますが、税金を払うのは、財産をもらったご家族です。いくら支払うのかは、支払う側が計算して税務署に申告することになっています。相続税の申告と納付はともに相続が起きた日の翌日から10か月以内で、納付の方法は「現金一括払い」です。
相続税が怖い理由の一つが、この「10か月以内に現金一括納付」という決まりです。
たとえば、今日、親が亡くなったとしたら、ご家族は10か月後には相続税を耳をそろえて支払わなければいけないのです。
「そんなこと急に言われても、いくら払えばいいかもわからないし、お金だって用意できないかもしれない」などと文句をいっても無駄です。
相続税は、相続が起きるまでは、支払期限も正しい支払額もわかりません。
でも、相続が起きると10か月以内に支払い義務が発生するという、国に対する「潜在的債務(借金)」なのです。
いつまでにいくら払えばいいかわからない借金なんて、聞いたことありませんよね。
たとえば銀行のローンなら、借入金額はもちろん、現在の借入残高もすぐに確認できますし、たいていは無理のない返済計画を組んでいるので返済に困ることもあまりありません。
でも、相続税は違います。相続が起きてはじめて支払期限が明らかになります。そして期限内に支払えなければ、年利8.7%(令和6年現在)という高利貸し並みの利息(延滞税)がかかります(最初の2か月は年利2.4%)。
そもそも、いくら払えばいいのかだって、国は教えてくれません。
相続税は支払う側が計算して税金の額を決めるといいましたが、「よくわからないから適当に計算すればいいや」なんてことが許されるわけではありません。
大袈裟にいえば、1円の単位まで、すべての財産を税務署に申告しなければいけないのです。
そして万が一、申告漏れや計算ミスがあれば、残されたご家族が税務署からペナルティを科されてしまいます。
相続税対策は効果が出やすいのが救い
このように、相続税は「コワイ債務」です。そんな債務を背負わなければならない、残された家族の負担はいかばかりか……。だからこそ、どんな財産があるのか、相続税がかかるのかどうか、かかるとしたら払うべき相続税はどのくらいか、家族が現金で一括で支払えるのかなど、事前に把握しておいてほしいのです。
もし確認の結果、相続税がかからないことがはっきりすれば、家族も安心です。もし、相続税がかかることがわかれば、必要に応じて対策を行いましょう。
相続税対策は、比較的効果の出やすい税金対策です。早めに行うに越したことはありません。
*本記事は、板倉京著『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成しています。