親が相続対策しないまま亡くなると、残された家族や子どもは、膨大な手続きに苦労したり、争族に巻き込まれたり、相続税が払えなかったり…と、多大な迷惑をこうむります。本連載では、知識のない親御さんでも、ステップ式で5日で一通りの相続対策ができる『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)を出版した税理士の板倉京さんが、最低限やっておくべき相続対策のポイントを本書から抜粋して紹介していきます。

【税理士が教える!】親が亡くなった後の相続手続きが「地獄」になるパターンPhoto: Adobe Stock

相続対策をしていなかった親が亡くなると……

親が亡くなると、残された家族は様々な「手続き」に追われることになります。経験のある人には共感してもらえると思いますが、相続後の手続きは、想像以上に大変です。

葬儀の手配から始まって、役所での手続き、財産の名義変更、生命保険の請求、クレジットカードや電話・インターネット・サブスクの解約などなど……。

子どもはあなたの財産や情報をどこまで知っているか?

親の財産や人間関係、暮らしぶりなどを知らない子どもにとって親の死後の整理をすることは、地図のない道を手探りですすむような大変な労力と時間のかかる作業となります。

葬儀や訃報の連絡は、親の友人・知人関係がわからなければお知らせする相手がわかりません。遺影も、写真が見つからなければ決められません。

パソコンや携帯が普及する前は、友人・知人の連絡先は手書きのアドレス帳、写真は現像してアルバムで整理している人がほとんどでしたので、そこから探し出すことはさほど難しくはありませんでした。でも今はアドレス帳もアルバムもパソコンや携帯で管理する人が増え、パスワードなどがわからないと、それらの情報にもたどり着けません。

財産情報がわからなければ、「家探し」からスタート

財産の名義変更は、ただでさえ手間がかかるというのに、肝心の財産の情報がなければ、まずは財産探しからスタートです。

家中の引き出しや押入れ、棚や箱の中などを探して、銀行の通帳や証券会社の口座情報、生命保険の証券や印鑑、キャッシュカードを探し出します。

財産の持ち主がいないため、全財産を探し出せたのか、正解はわかりません。探し漏れがないようにと、なんとかすべてを探し出そうと思えば、それだけ時間がかかります。

財産探しが一通り済んだら、次は銀行や証券口座の解約、不動産の名義変更、契約していたサービスの解約や名義変更などの手続きです。

契約していたサービスとは、電話、インターネット、水道光熱費、クレジットカード、新聞や動画配信やアマゾン、有料アプリなどのサブスク、スポーツジムや定期購入など、利用料金のかかるものすべてです。

どんなサービスを契約していたのかがわからなければ、通帳やクレジットカード・携帯電話の支払い履歴をさかのぼって、調べるしかありません。

口座や契約しているサービスの数だけ必要な相続手続き

相続手続きは、原則、相続人しか行うことができません。戸籍謄本で相続人だと証明しつつ、会社ごとに違う書式の書類を提出していきます。いくつも口座があったり、多くのサービスを契約していたら、その数だけ手続きも書類も必要になります。

手続きは、郵送やネットでできるものもあれば、窓口でしかできないものもあります。窓口に行ったら、書類の不備があって、何度もやり直しをさせられたという経験をしている人も少なくありません。
これらのすべてを残された家族が行うことになります。

近くに住んでいたり、時間の自由が利く家族がいるならまだしも、遠方に住んでいたり、仕事や育児に忙しい子であれば、なんとか時間を捻出し、交通費をかけて何度も足を運んで財産を探し、手続きをすることになるのです。

親の相続手続きで、大変な思いをしてきた人をたくさん見てきました。

せめて親御さんが財産整理をし、必要な情報を家族に残してくれていたら、こんなムダな労力をかけなくてよかったのに……と思うことが多々あります。
是非、この本を使って、大切な子どもたちに迷惑をかけないための、相続対策を行っていただきたいと思います。 

*本記事は、板倉京著『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成しています。