トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の「通信簿」と題して、サプライヤー幹部250人からアンケートを取ったダイヤモンドの特集が興味深かった。値上げの内幕や取引先との接待の実態が赤裸々に記されている。今回は『サプライチェーン難問山積』連載の番外編として、本特集を辛口に評価する。(未来調達研究所 坂口孝則)
ダイヤモンドの自動車・サプライヤー
「非常事態」特集に対して思うこと
週刊ダイヤモンド11月23日号『自動車・サプライヤー「非常事態」』なる特集を読んだ。『アンケートの結果を基に、同業界の病根に切り込む』とある。
この特集では、『自動車メーカーが下請けいじめをしている』という批判がなされる。しかし同時に、サプライヤーも「求められたものを納品するだけ」との印象だ。さらにサプライヤーは、『完成車メーカーにおんぶに抱っこで後手』と指摘されているから、そのどちらも病根のようだ。
周知のように、日本には無数の中小零細企業がある。そして統廃合が進まないまま、自動車メーカーを頂点とした幾多の企業が網の目のようにつながっている。自動車メーカーはティア1サプライヤーと連携していて、その下には孫請け(ティア2サプライヤー)、ひ孫請け(ティア3サプライヤー)……とピラミッドが形成される。
自動車ビジネスを、地道に改善するスタイルは、日本人と日本企業の風土に合致してきたといえる。自動車メーカーからの上意下達により、いわゆる「すり合わせ」技術を可能にし、高品質かつ価格競争力のあるクルマを世界中に販売してきた。
しかし、電気自動車(EV)の台頭を封切りに新興メーカーが攻勢をかけてくる時代になり、日本企業も従来のままではいかなくなってきた。何しろ、EVの基幹部品を自動車メーカーが抱え込んで内製化し垂直統合を図ったり、ケイレツに縛られない欧米のメガサプライヤーが躍進したりしているのだ。
これまでも日本の自動車産業は「危機を演出する」ことで、グループの一体化を図ってきた(なお筆者もかつて自動車メーカーに勤務していた)。しかし、中国のBYDや米テスラなどの登場によって、違うステージの危機に陥ったことが、非常事態なのだろう。そんな時代背景からも、非常に面白い特集となっている。