ノーベル平和賞を受賞した
日本原水爆被害者団体協議会
増田 被爆者の方々の長年の活動が国際社会から評価されました。2024年のノーベル平和賞に、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が選ばれたのです。12月10日にノルウェーのオスロ市庁舎で行われる予定の授賞式には、広島・長崎の被爆者が出席し、式翌日のフォーラムでも被爆体験を証言すると報じられています。
受賞が伝えられた瞬間の映像は印象的でした。広島県被団協の箕牧智之理事長が受賞の報に驚いた後、涙を流しながら何度も「夢じゃないよな」と頬をつねっていましたね。
池上 日本被団協は毎年、受賞する可能性に備えて発表当日に広島市役所に待機していました。例年は「今回も残念だったね」で終わっていたのですが、今年はついに受賞したのです。箕牧理事長と同席していたのは「平和大使」を担っている広島の高校生。私は毎年、8月に広島に取材に行きますが、被爆者の平均年齢は85歳を超え、間もなく被爆者から直接話を聞くことができなくなる。将来的には彼らが被爆体験や核廃絶運動を引き継いでいくことになります。
増田 そうした若者の存在は救いですね。しかし政治に目を転じると、新しく総理に就任した石破茂氏はかねて「核共有」を持論としています。その石破総理が日本被団協の田中煕巳代表委員に電話で祝意を伝えた際に、「核兵器は究極的には廃絶すべきであるという思いがある一方で、安全を守るためには現実的な対応をしなければならず核抑止が必要だ」とも述べたそうです。日本のリーダーとして、本当に被爆者の方々の思いを酌んでいるのかと疑問に思いました。
池上 日本被団協が提案する日本の核兵器禁止条約へのオブザーバー参加について、石破総理は「真剣に検討する」と岸田政権以上に踏み込んだ姿勢を示してはいます。
増田 さまざまな留保をつけながら、ではありましたけどね。核の脅威、被害を知る日本だからこそ、本来は米国の核の傘の下にいなくてもよくなるような、核のない世界を目指すべきなのではないでしょうか。