マスク氏のxAI、オープンAI猛追の舞台裏PHOTO: EMIL LENDOF/WSJ, ISTOCK

 イーロン・マスク氏はこの1年間、同氏が立ち上げた人工知能(AI)スタートアップのxAIを急ピッチで成長させることに力を入れてきた。現在の課題は、同社を本格的な事業に転換することだ。

 マスク氏は昨年の夏、生成AIチャットボット「チャットGPT」開発元の米オープンAIに追いつくことを目指してxAIを設立した。同氏はオープンAIの共同創業者だが、2018年に権力闘争の末に退社していた。マスク氏は業界から幅広く人材を引き抜いた。巨大データセンターを新設する計画では、数カ月という前代未聞の短期間で完成させるよう業者に迫った。テネシー州メンフィスに建設したこの新施設についてマスク氏は、12月までに「あらゆる指標において」世界最強のAIをxAIが提供する後押しになるとの自信を示した。

 投資家はマスク氏のビジョン、あるいは少なくとも同氏の成功実績に信頼を置いている。xAIはこれまでに少なくとも110億ドル(約1兆7000億円)を調達した。企業価値の評価額は今月の新たな資金調達ラウンドで500億ドルとなり、非上場のAI開発企業としてはオープンAIに次いで2番目に評価の高い企業となった。

 ただ、収益を生み出す事業としては、xAIはほとんど存在感がない。同社は投資家に対し、売上高は年間1億ドルを超えるペースだと説明している。オープンAIは今年、40億ドル近くの売上高を見込んでいる。

 xAIの売上高の大半は、マスク氏が率いる企業群からもたらされている。xAIの主力製品のチャットボット「Grok(グロック)」は、同氏のSNSであるX(旧ツイッター)の有料サービスのユーザーのみが利用できる。関係者によると、xAIは宇宙開発企業スペースXのインターネットサービス「スターリンク」のカスタマーサポート機能を支えている。Xの検索エンジンの新たなAI機能にもxAIは貢献する見込みだと関係者の1人は語った。