片づけの最初の一歩は「捨てる」こと。
このようにお伝えすると、必ずと言っていいほど訊かれるのが「思い出品はどうすればいいですか?」。
「もったいないから捨てられない」という人たちのなかでも、特に苦手なのは「思い出品」の処分だ。どれも大切な思い出だから捨てたくないというのが本音だ。
そこで、登録者数16万人の人気YouTube「イーブイ片付けチャンネル」の運営者であり、書籍『1万軒以上片づけたプロが伝えたい 捨てるコツ』の著者・二見文直氏に、捨てることへの罪悪感を手放す方法について聞いてみた。(構成/ダイヤモンド社・和田史子)
1その思い出「品」、本当に大事ですか?
株式会社ウインドクリエイティブ代表取締役。一般社団法人遺品整理士認定協会認定遺品整理士。生前整理技能Pro1級。2016年には株式会社ウインドクリエイティブを設立し、代表取締役に就任。月平均130軒以上のお宅を訪問し、これまで1万件以上の片づけを経験。年間約5000件以上の相談を受け、のべ4万件を超える全国からの「片づけられない」悩みと向き合ってきた。2016年にスタートしたYouTubeチャンネル「イーブイ片付けチャンネル」は、登録者数16万人、総再生数7500万回を突破(2024年11月現在)。片づけに悩む人々に寄り添う姿が共感を呼び、多くの視聴者から支持されている。『1万軒以上片づけたプロが伝えたい 捨てるコツ』(ダイヤモンド社)は初の著書。
片づけの第一歩は捨てること。この連載で何度もお伝えしてきました。
そこで必ず出てくる言葉が「思い出品は捨てられません!」です。
子どもが描いた絵や工作で作った作品、旅先で買った記念品や泊まったホテルのアメニティグッズ、友人知人や家族からもらった贈り物……。
思い出のモノを簡単には捨てられず、何年も、何十年も溜め込んでいる人はたくさんいらっしゃいます。
しかし、これだけは覚えていてください。
思い出の品を捨てることは、思い出を捨てることではありません。
思い出のモノを持ち続けている人が、思い出を大切にしているとも限らないのです。
「そんなところにあったんですね…」
依頼者さんのお宅の天袋や押し入れの奥や、床下収納などから、大量の写真やアルバム、思い出品と思われるグッズが発掘されることがあります。
どれもホコリをかぶっていて、お世辞にもきれいな状態とはいえません。
「そんなところにあったんですね…」
「この写真、いつのだろう?」
「(写真の)写っている人が誰だかわからない」
大切な「思い出品」のはずですが、9割の人はその存在すら忘れてしまっています。
これは決して悪いことではありません。
今が充実しているという言い方もできるでしょう。
しかし、その存在すら忘れていたのだとしたら、本当の意味で思い出を大切にしているとは言えないのかもしれません。「捨てられない」と言うのは、モノへの執着かもしれません。
「やっぱりそうだったのか」と、ドキッとされた方もいるかもしれません。
執着に気づけば大丈夫です。執着は手放せます。
本当に大切なものを大切にできているかどうか。いや本当に大切だったのか?
手紙や家族の記念写真など本当に大切なモノだけ手元に残し、見返すことのない「形ばかりの思い出品」は勇気をもって手放しましょう。
震災で家を失ったおばあさんが、そこで暮らした穏やかな日々のことを話しているのをテレビで見たことがあります。「大切な思い出」は、簡単に奪い取ることなどできません。心の中にちゃんとしまってあるからです。
「思い出まで捨てるわけではないですよ」
僕はこの一言を添えて、依頼者さんの背中をそっと押します。
「捨てる罪悪感」も一緒に手放してほしいからです。
「本当に大切なもの」を大切にするために
処分するモノ(思い出品)は、写真に撮ってスマホに保存すれば、折に触れて目にする機会も増えますよね。思い出を忘れない「想い」を大切にするためにも、執着だけで溜め込んできたモノは感謝して手放しましょう。
「今までありがとう」と一声かけて処分すると、物理的にも精神的にもすっきりします。
もちろん、これだけは捨てたくない「とっておきの一枚」があれば、お気に入りの写真立てに入れて、目にとまるところに飾りましょう。
以前、お孫さんが大好きなおじいちゃん、おばあちゃんのために、自分(孫)たちの成長記録の写真をデジタルフォトフレームにしてプレゼントされたというお話を聞きました。大量のフエルアルバム(分厚くて重いアルバム)とネガフィルムはすべて処分したそうです。
手の力が弱くなったおばあちゃんが重いアルバムを開くのは大変です。白内障が進んでいるおじいちゃんは、やや暗めの写真だと見るのもひと苦労です。
ですが、画像も明るくて画質もクリアなデジタル画像であれば問題ありません。おじいちゃん、おばあちゃんは大好きな孫がいつでも見られると大喜びだそうです。
「本当に大切なもの」を大切にするために捨てるのだと考えてみてください。そして「捨てる罪悪感」も一緒に手放してしまいましょう。