エネルギー産業への投資が急務、建設・不動産業界に偏る脱炭素投資写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

パリ協定合意内容から後れを取る脱炭素の進捗

 パリ協定は、気候変動問題に関する法的拘束力のある国際条約である。2015年にパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で196ヵ国・地域が、世界の平均気温の上昇を「産業革命前の水準より2℃を十分に下回る程度に抑え、1.5℃に近づくよう努力する」という目標に合意した。

 各国政府はパリ協定の達成に向けて、自国の目標を掲げ、50年までに温室効果ガス(GHG)排出を「ネットゼロ」にすることを目指す国は120ヵ国を超える。ネットゼロとは、世界の人為的な温室効果ガス(GHG)の排出量が二酸化炭素(CO2)の除去量とバランスが取れている状態で、「カーボンニュートラル」とも呼ばれる。

 24年9月にPwCが発表したレポートによれば、脱炭素化、つまり石炭などの炭素集約的な化石燃料から太陽光などの「クリーンな」再生可能エネルギーへの転換は、23年にはほとんど進まなかった。23年の世界の炭素強度(一定量の発電をする際に排出されるCO2の割合)の減少率はわずか1.02%と、過去11年間で最低で、00年以降の平均年間減少率の1.4%を大幅に下回った。

 ネットゼロ目標を達成するためには、50年までに年間7兆3,000億ドル、合計約200兆ドルもの投資資金が必要だと試算されている。しかし、22年にようやく1兆3,000億ドルとなったことを考えると、足元の投資資金不足は極めて大きい。30年までに低炭素支出を高炭素支出の4倍、50年までに10倍にする必要がある。資金不足問題への対処には、金融・規制システム全体として取り組む必要がある。