進撃の日本製鉄#4Photo by Shotaro Imaeda

二酸化炭素(CO2)の排出量削減は、鉄鋼業界にとって待ったなしの課題だ。大手鉄鋼各社はカーボンニュートラル達成に向け、さまざまな技術開発を進める。しかし、その技術が開発途上にある現状では、事業拡大のためにCO2排出は避けて通れないというジレンマを抱える。特集『進撃の日本製鉄』の#4では、カーボンニュートラル戦略から垣間見える日鉄の“したたかさ”を明かす。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

脱炭素に向けた戦略の“したたかさ”で
JFEや神戸製鋼など競合との格差が開く

 あらゆる業界で二酸化炭素(CO2)排出量削減が求められる中でも、生産の過程で多量のCO2が発生してしまう鉄鋼業は、特に抜本的な生産方法の変革が求められる。そのため、世界中の鉄鋼メーカーが、カーボンニュートラル達成に向けてさまざまな技術開発を進めている。

 しかし現段階では、CO2を全く排出しない製鉄技術は確立されていない。鉄鋼各社は、成長のために事業を拡大するとCO2排出量が増加してしまうジレンマに直面している。

 海外進出によって躍進を続ける日本製鉄も例外ではない。会社として、時代の潮流に即してカーボンニュートラルに取り組まざるを得ないのが実情だ。

 ただし、日鉄の取り組みをつぶさに見ていくと、脱炭素に取り組む一方、“反脱炭素的”投資を惜しまない“したたか”な戦略が浮かび上がってくる。

 次ページでは、日鉄のカーボンニュートラルの「本音と建前」を明らかにし、その裏に隠れた成長戦略に迫る。