目指すは早稲田か慶応大学!
15歳の〈菅田将暉〉と父との約束

 私は何につけ、子どもたちの意見を尊重することが大切だと考えていました。だからこそ、応援できる時は、できる限りの応援をしてやりたいと思いました。けれども、人生は長いのです。いい時も、悪い時もあり、躓く時はそれなりの理由があります。本人の力量に関わらず、誰にでもタイミングの良し悪しはあるものです。

 ここは慎重になっても損はないのだということを、親として教えるべきだと思いました。まだ15歳の大将だけで答えを出すには早すぎました。私は、子どものやりたいことができる環境をつくり、可能性を高めてやることが父親の務めだと考えたのです。

「まずは高校へ進学する。その後に早稲田か慶応大学を目指す。そうしたら俳優への道へ進むための応援は、お父さんが目いっぱいしてやる。だから、今は勉強を頑張ろう」

 これが男同士の約束でした。

 翌年、この判断が意外なところで吉と出ました。

 大将は高校生になってから、身長がグンと伸び、父親が言うのも気が引けるのですが、凄く男前になってきました。自宅近くにある高校へ通っていたのですが、「王子」などというアダ名がついていて、学校内のファンの女の子たちに、廊下越しによく「写メ」を撮られていたようです。

 そんな時に、今度は大将のほうからオーディションに出たいと相談されました。

「お父さんとの約束で、大学受験までは勉強に集中すると約束した。けれど、ジュノンボーイのオーディションがあるから、どこまで行けるのか一度チャレンジしてみたいんだ。行ってもいいかな。それでダメなら、しばらく学業に専念すると約束するから」

 私は「よし、行っておいで」とチャレンジを容認しました。

 私は基本的に、本人のことは本人の意思で決めさせています。口を挟むのは本人にとって必要な時だけです。

 大将は、保護者印が押されたエントリーシートを受け取って、嬉しそうに2階の自室へ戻って行きました。