仕事や日常において、どうしようもない壁にぶち当たった時、頼りになるのは「直観力」だ。その直観力は年齢に関係なく向上していくのだと専門医は話す。直観力を向上させる方法とは。※本稿は、岩立康男『直観脳 脳科学がつきとめた「ひらめき」「判断力」の強化法』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
天才ならぬ凡人だって思考次第で
優れた直観を生み出せるかも?
直観力の源は、脳に広く蓄えられた意味記憶である。私が強調しておきたいのは、歳を重ねることによる意味記憶の蓄積が、優れた直観力の発揮に欠かせないということだ。もちろん、若い人でも直観力の優れた人はいるし、むしろ革命的な着想は若い人の特権であろう。これはむしろ、余分な知識・記憶が少ないために、ある事柄に対して突出した直観が働くからで、それができるのは、天才あるいはそこまでいかなくても非常に才能あふれた人ということになる。
しかし、平凡で突出した才能のない人間でも、脳の使い方次第で優れた直観にたどり着くことができるかもしれないのである。そのためにはどういったことを心がければいいのか。当然ながら、直観というものは、「さあ、直観を出すぞ!」と頑張って得られるものではない。普段からの準備と、何か目的を持って考え始めた時の思考法が重要なのである。
より優れた直観にたどり着くための「思考法」を探っていこう。
「良い記憶」の積み重ねが
素晴らしい直観につながっていく
まずは「良い記憶」を蓄積することが大切になる。積み重なった経験次第で、次の経験で何を記憶に取り込むかが決まってくる。これは連鎖反応のようなものであり、良い経験が良い記憶を作り、それが次の良い記憶を呼び込むことになる。
注意したいのは、「良い記憶」の意味合いである。なにも、良い結果だけが重要であるとか、贅沢な経験や人もうらやむような経験などを積み重ねなさい、と言っているわけではもちろんない。
その過程が重要なのである。「何をやりたいのか」目標を持って、常にそこを見据えながら、その時々で精いっぱいの努力をしてきた中での経験こそが「良い経験」と言えるはずである。そういった経験は記憶のネットワークに残り、また次の良い経験をもたらす。