インドでは左手は「不浄」とされ、左手で握手や食事をすることは忌避されている。その理由のひとつに、排せつ後、トイレットペーパーを使わず左手でお尻を拭くというインド式のトイレ事情がある。日本とは大きく異なるインド人のトイレの価値観とは?※本稿は、宮崎智絵『インド沼 映画でわかる超大国のリアル』(インターナショナル新書、集英社インターナショナル)の一部を抜粋・編集したものです。
長距離列車のトイレは最悪
排せつ物が線路に落ちる
もしインドの長距離列車に乗る機会があったら、早朝、窓の外を見てください。草むらにソーシャルディスタンスをとってしゃがんでいる人たちが見えるでしょう。
手には何か小さなバケツかツボのようなものをもっています。彼らは、用を足しているのです。いわゆる野外排せつです。
インドに行くと、女性はトイレには苦労します。男性なら野外でもなんとかなるかもしれませんが、女性はそうもいきません。インドのトイレ事情はいろいろな問題があり深刻です。たかがトイレ、されどトイレなのです。
インドのトイレには、大きく分類すると、インド式と洋式の2種類があります。インド式は、しゃがんで使用しますので、日本式に似ています。洋式は、便器は洋式ですが、決してレバーやボタンを押したら流れる水洗ではありません。
高級ホテルやレストランならともかく、安宿やリーズナブルなレストランの洋式トイレは、手動式水洗トイレです。つまり、バケツに水を汲むか、備え付けのシャワーなどで自分で流すのです。インド式も同じで、自分で流します。
基本的にインド人は、トイレットペーパーを使いません。トイレには、小さなバケツのようなものが置いてあります。それに水を入れて、左手でお尻などを洗います。だから、左手は不浄とされ、左手で握手をしたり、人に手を振ったりしてはいけないのです。
また、トイレットペーパーを使うのは外国人やお金持ちですから、ちょっと高いのです。一般庶民が気軽に使い続けられる値段ではありません。しかし、インド人のように水でお尻を洗うのはけっこう難しいです。インド式トイレならまだしも、洋式トイレでの水洗いは高難度です。
長距離列車のトイレは、最悪です。トイレはステンレス製で、洋式とインド式の両方があります。便器の底には穴があいていて、糞尿は線路に落ちるようになっています。
さて、ニューデリーやムンバイなど始発駅ではピカピカしているトイレですが、数時間もするととても汚れます。