ニュースな本写真はイメージです Photo:PIXTA

インドのカースト制度に基づく差別は現代では法律で禁止されているものの、今もなお人々の生活に深く根付いている。職業選択の自由や食べるもの、結婚相手、人間関係など生まれながらにして多くを制限されているカースト制の実態とその起源を専門家が解説する。※本稿は、宮崎智絵『インド沼 映画でわかる超大国のリアル』(インターナショナル新書、集英社インターナショナル)の一部を抜粋・編集したものです。

インドのカースト制度を描いた
傑作「きっと、うまくいく」

 インドといえば、“カレー”、“ターバン”、“映画”とともに“カースト制”を挙げる人も多いでしょう。世界史の授業で、「バラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラ」という身分制度を習ったと思います。最近では、「スクール・カースト」という言葉も一般的に使われるようになってきました。

 映画『3Idiots』(邦題:きっと、うまくいく、2009年)でも、成績によって序列をつけることをカーストみたいだと主人公のランチョーが指摘する場面があります。

『3Idiots』(邦題:きっと、うまくいく)同書より

 内容は、次の通りです。10年前、インド屈指の難関工科大学ICE(Imperialcollege of Engineering)にそれぞれの家庭の期待を受けて入学してきたファルハーンとラージュー、そして自由奔放な天才ランチョーの3人は寮でルームメイトとなります。

 何をするにも一緒の3人はしばしばバカ騒ぎをやらかし、学長や秀才のチャトル等から「3バカ」と呼ばれ目の敵にされていました。「きっと、うまくいく」というモットーのもと、なんとか大学を卒業しますが、卒業と同時にランチョーは姿を消してしまいます。

 ファルハーンとラージューは、ある日チャトルから母校に呼び出されます。チャトルがランチョーの消息がつかめたということで、3人はランチョーを探しに行くことにします。

 10年前の大学生活の思い出と現代のランチョーを探す3人の旅を織り交ぜながら、やがてファルハーンたちはランチョーが実は庭師の息子で、領主の息子の身代わりで大学に行き、今は何百という特許をもち、理想の小学校を作ったことを知るのです。

 さて、ランチョーは、序列を可視化することを「カースト」と表現しています。成績順に座って集合写真を撮る場面で学長の隣に座った学年1位のランチョーは「こんな所に座るのはどうも……」と言います。

「何か問題でも?」という学長に対してランチョーは、「問題だらけです。まるでカースト制度だ。“優”は王様、“可”は奴隷、間違っています」と言います。