「ジョブ型」「メンバーシップ型」
ではなく当社は「自由型」

 いわゆる「ジョブ型組織」といわれるような組織形態は、こういうブレを極力なくすために「ジョブ」という枠組みをつくり、そこに人を当てはめていくマネジメントスタイルです。

 木村石鹸の場合は「ジョブ型」でもないし、その対極の「メンバーシップ型」でもありません。各人の役割は状況によって変わるのです。各人が勝手に考え、いろいろやる「自由型」。

 営業担当が、自社商品の開発ディレクションをやるし、広報担当は1名いるものの、その人の他にも、広報的な役回りをしている人は3~4人います。三重の新工場では「工場長」という役職はなく、「全員が工場長」という、かなり面倒くさいことになっています。6年前から組織図もなくしました。

 こういう説明をすると、そんな適当で大丈夫なのか、無駄が多すぎるのではないか、組織として機能しないのではないか、と心配されることが多いのですが、もちろん問題もあります。が、その問題を補って余りあるぐらいに、社員は積極的にいろいろなことに取り組んでくれています。自分がしたいことしかしない、みたいな人もいません。

 何がそういう状況をつくり出すのかを問われても、僕にもよくわかりません。この状況は社員が増えていっても成立するのか、組織が今より何倍も大きくなっても成立するのか、そんなことも正直よくわからない。よくわからないので考えない。

 これは、やっぱりピッチには向かないでしょう。でも、うちは人がすごい。これだけは自信をもって言えることです。

木村石鹸
1924年創業。高級品だった石鹸が普及し始めた大正時代、初代・木村熊治郎が「木村石鹸製造所」を創業。釜の中で成分を反応させてつくる釜焚き製法により、普段使いの質のよい石鹸を研究開発。以来、家庭用の石鹸、洗浄剤、化粧品、事業用洗剤・洗浄剤の開発、製造、販売をつづけ、2024年4月に操業100周年を迎えた。「Forbes JAPAN」の日本が誇る小さな大企業を選ぶ「SMALL GIANTS AWARD 2019」にて「ローカルヒーロー賞」受賞。