強いて言うなら、木村石鹸の強みは「人」です。「人がすごい」のです。1人ひとりの能力や経歴がすごいという意味ではなく、チームで働いているときに、すばらしいパフォーマンスを発揮する、という意味でのすごさです。
よくわからないからこそ
人間は魅力的なんだ
言葉にすると陳腐で、訴えかけてくるものがありません。再現性も低そう。ピッチで「人がすごい」なんて語ったら、一笑に付されるだけかもしれません。でも、「人がすごい」としか言いようがないところがあるのです。
たとえば、サウスウエスト航空の場合。
旅客機の統一、不要な機内サービスの廃止、短距離輸送へのフォーカス、飛行機の陸上待機時間の短縮などを通じて徹底的な効率化を図っていますが、こうした「事業モデル」で格安運賃を実現することが、この企業の「強み」ではないように思います。
もちろん事業モデルは重要ですが、それは他の航空会社でもやろうと思えばできます。実際、サウスウエスト航空が中距離格安航空として成功を収めたのを見て、大手各社も同じモデルで参入してきました。でも、ほとんどうまくいかなかった。どうしてなのか?
それは、サウスウエスト航空の強みが、従業員の会社への忠誠心の高さや、仕事に対する熱意といった漠然としたものにあるからです。そういう曖昧なものをベースとして、個々の業務が(アメリカ合衆国の経営学者、マイケル・ポーター先生の言い方を借りると)「フィットしている」。そこに強みがある。
人ってよくわからないから魅力的だと思うんです。機械なら設計された性能がきちんとあって、通常はそのパフォーマンスを正確に発揮してくれます。
でも、人にはムラがあります。しかも、他人や環境に影響を受けてパフォーマンスが変わったりもします。うまく機能していたチームに「困ったちゃん」が1人加わるだけで、チームが機能しなくなったり、その逆もしかりで、たった1人が増えたり減ったりすることでチームとしてのパフォーマンスが急激に上がることもあります。不確実性が高い。