ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

「社員の生産性を上げるにはどうすればいいんだ……」そんな悩みを抱えている経営者や管理職は多いだろう。その解決策は、イギリスで行われたある実験結果から導き出せるという。ビジネス心理学の専門家が解説する。※本稿は、内藤誼人氏『世界最先端の研究が教える新事実 対人心理学BEST100』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。

従業員を楽しい気分にさせて
職場の生産性を上げよう

 ビジネス書を読んでいると、「従業員を幸せにする会社ほど、生産性が高い」ということが書かれています。

 なんとなく、「そうなのだろうな」とは思いますが、現実にきちんとした裏付けはあるのでしょうか。心理学者は、こういうときに、必ず実験をして確認します。

 イギリスにあるウォーリック大学のアンドリュー・オズワルドは、「幸せな気分のときに、本当に生産性が高まるのか」を確認するための実験を、何度もくり返しました。参加者はのべ700人を超えます。楽しい気分にさせるために、オズワルドは第1実験と第2実験では、「コメディアンのビデオ」を使いました。コメディアンのビデオを10分間見せてから、2桁の数字を5つ足し算する(31+51+14+44+87=?)という単純な計算作業をやらせてみたのです。

 この実験では、できるだけ早く、できるだけたくさん解くことが求められました。正解すると1問につき、0.25ユーロが支払われることになっていたので、参加者は真剣に取り組んでくれました。これで生産性を測定してみたわけです。

 その結果、コメディアンのビデオで大笑いした後には、たしかに生産性は上がっていました。「楽しい気分を与えてやれば、生産性は上がる」ということは、本当のことだったのです。

注意や激励の声かけよりも
楽しい仕掛けを導入すべし

 オズワルドはさらに、果物やチョコレートを食べさせることで幸せな気分にさせたときはどうなるのかも実験しました(第3実験)。このときにもやはり、生産性は上がりました。

 お笑い映画を見せようが、おいしいものを食べさせようが、幸せな気分にさせるやり方はどうでもよいようです。どんな形であれ、「楽しいなあ」「幸せだなあ」という気持ちにさせることができれば、生産性は12%ほど高くなる、ということをオズワルドは突き止めました。

 もし私が会社の経営者であれば、従業員を楽しませることを第一に考えるでしょう。

 従業員が楽しく仕事をしてくれれば、生産性は上がるからです。「みんな手を抜くな!」とか「真剣にやれ!」とハッパをかけなくとも、楽しい気分にさせることができれば、生産性は自然に上がります。