社員が挙げる不満や課題は「悪いあの人(会社)」か「かわいそうなわたし」のいずれかが多い。本人たちは「悪いあの人」「かわいそうなわたし」ばかり話していることに無自覚です。

 三角柱を使って、相談者本人に選ばせるのは、問題はそこにはない、ということを本人に自覚させる作業です。いくら「悪いあの人」「かわいそうなわたし」の話をしても、問題は解決しません。

 社員自らが「これからどうするか」を選び、その内容について考えられる、語れるようになるかどうか。問題を解決していくには、そんな社員が増えることが重要です。

木村石鹸の魅力や優位性は
「人がすごい」こと

 エレベーターピッチという言葉があります。投資家から投資を受けるためには、偉いさんがいる高層階までのエレベーターのわずかな時間でビジネスの魅力や優位性を伝えられなければならないといった意味だったように思います。要するに、自社の魅力は簡潔に伝えられ、伝わるものでなければならない、という考えです。

 僕はピッチイベントには出ないと決めています。ピッチイベントとは、数分~30分の短い時間で自社をアピールして優劣を競うような場です。投資を受けることを目的としたものもあれば、協業先を探すもの、単純に自社のことを広く知ってもらうことが目的のものまで、さまざまなピッチイベントが開催されています。

 このピッチイベント自体が悪いとは思いません。むしろ、そのような場で自社の魅力をきちんと伝えられることはすごいことだなと思うし、純粋にカッコいいなとうらやましかったりもします。

 ただ、木村石鹸という会社のキャラクターを考えると、ピッチには向いていないと思っています。「ピッチ受け」する要素をうまく組み立てて構成することはできなくはない。でも、それで伝えられるものは、本来の木村石鹸の強みや特徴と違うのではないかと思うのです。

 僕は、木村石鹸の魅力や優位性は簡単に説明できないところにあると思っています。簡単に言葉にできない、説明できないからこそ「強い」「競合優位」なのではないかと。