わが社は「ジョブ型」ではなく、その対極の「メンバーシップ型」でもありません。各人が勝手に考え、いろいろやる「自由型」です。新工場では全員が「工場長」です──100年続く老舗・木村石鹸の四代目が語る独自の仕事論。若い社員が生き生き働き続ける、その理由がよくわかる。本稿は、木村祥一郎『くらし 気持ち ピカピカ ちいさな会社のおおらかな経営』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。
会社の課題を解決するのは
会社ではなく個々の社員
社員に「自社についてどう思う?」と尋ねると、だいたい不満や問題点がだーっと返ってきます。社員は不満をたくさん持っているものです。
その社員に「じゃあ、その不満に対してあなたは何ができるの?」と問いかけると、たいていの人は回答に窮します。「え?」と驚く人も多い。つまり、ほとんどの人は、会社の課題を解決するのは、「自分ではない」と思っている。自分以外の誰か、あるいは、会社が解決するもの、と思っているのですよね。
でも「会社」という実態のない記号みたいなものが、課題を解決してくれるわけではありません。社長や経営者、マネジャーがすべての課題を解決できるわけでもありません。会社の課題を解決する専門部隊や専門家がいるわけでもありません。もちろん、社長やマネジャー陣が陣頭指揮を執らないと解決できない問題もたくさんあります。
でも、実際、会社の課題を解決していくのは、現場にいる人たちですし、直接解決する立場・役割でなくとも、現場にいる1人ひとりが解決に向けて、協力できることは何かしらあります。
アドラー心理学がもとになっている書籍『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え2』(ダイヤモンド社)の中で、著者の岸見一郎氏がカウンセリングの場面で使う三角柱の話が出てきます。
「これからどうするか」を
考える社員が増えることが重要
三角柱の各側面には、「悪いあの人」「かわいそうなわたし」「これからどうするか」と書かれてある。
カウンセリングを受けに来るたいていの人は、「悪いあの人」か「かわいそうなわたし」のどちらかの話をするそうです。そこで、患者にこの三角柱を渡し、自分が話をする前にどの話をするのか、話をする内容をこちらに向けてから話すようにお願いする。すると多くの人が、「これからどうするか」を選んで、その中身を考え始めるというのです。
このエピソードを読んだとき、社員に会社の問題を聞いたときの状況に似ているなぁと思いました。