ある日、朝出勤してみたら、自分の会社が中国企業に買収されることが発表された。30年前から欧米企業やアジア企業を次々に買収しながら成長してきた会社だったのに、いよいよ今度は中国企業に買収される側になったのかと、従業員はみんな不安を隠せない。新年1月4日には、日本の会社の新社長になる中国人が来日して、全従業員向けに所信表明を行うらしい。何を喋ってくれるのだろうか。
「日本人ぽい外国人」では足りない
グローバルビジネスのモデル転換
筆者は二十数年にわたって、日本企業のグローバル化を人材・組織の側面からサポートしてきた。日本企業のグローバル化は、日本でのビジネスモデルを海外にそのまま展開する形態から、現地に合わせた開発、生産、マーケティング、販売、物流が求められるようになってきた。
海外企業を買収すれば、突然の買収に戸惑う現地人材をうまくマネジメントし、企業理念を浸透させ、新たな組織風土を醸成することも求められる。海外に行っても、日本人か「日本人ぽい外国人」が、日本企業の顧客向けに、日本語で、日本にいるときと同じようにビジネスを行うだけではなく、非日系企業の顧客向けに、英語や現地語で、日本でやったことのないようなビジネスを展開し、「日本人ぽくない人材」に任せて新たな視点でイノベーションを起こしてもらう必要にも迫られてきた。
日本企業はアジアでどう見られているか?
調査でわかった人気の落ち込み
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所が行う「日本企業はアジアでどうみられているか」という調査に筆者も関与してきた。2008年から10年、12年、14年と4回調査を行い、その後8年間実施せず22年に実施した。
調査を行わなかった8年間に、日本企業は、多様化するビジネスのグローバル化に対応すべく、グローバル人事部の新設、「日本人ぽくない外国人」を含めた外国人の採用・登用、海外への経営理念浸透、日本人海外駐在員や外国人の選抜・育成、ジョブ型導入を含む人事制度体系のグローバル化、人材データのシステム導入など、人材・組織の面で様々な施策を行ってきた。