平野 みんな、どうすれば、好きな分人を長く生きられるか、ということを、これからはシビアに考えていくと思います。自分が死ぬ時に、自分が個々の分人をどれくらいの長さ生きたかを振り返る。その時に、あの分人をもっと生きたかった、あっちの分人を生きることにそんなに時間を費やすべきじゃなかったと、そういう見え方になるんじゃないか。ブラック企業で働いていた時の分人とか、あるいは極端な例では、戦場に行かされた分人だとか。
『空白を満たしなさい』という僕の小説のテーマも、そこのところは大きいんです。リアルタイムでも、嫌な分人を生きるのが辛い、嫌だ、消してしまいたい、という感情はどうしても湧いてくる。その時、どう考えるべきなのか。今、若い自殺者がすごく多いですが、僕はこの問題を考えるべきだと思ってます。
ここ10年ぐらい、きれいごとではなく、本当にお金じゃない経済圏というか、そういう社会の動きがかなり増えてきたな、と改めて実感していますが、そういうあたりに関係してるんじゃないですかね。
山口 本日は貴重なご意見をうかがうことができて、本当に勉強になりました。ありがとうございました。
平野 こちらこそ、ありがとうございました。(談)
平野啓一郎さん書籍のご案内
講談社・刊
『ドーン』『私とは何かー「個人」から「分人」へー』につづく“分人”三部作の集大成!
30代の死因第1位……自殺。日本人は今、なぜ死を選ぶのか?現代の生と死、そして幸福の意味を問う衝撃作。
世界各地で、死んだ人間がよみがえる「復生者」のニュースが報じられていた。主人公・土屋徹生は36歳。3年前に自殺したサラリーマン、復生者のひとりだ。愛する妻と子に恵まれ、幸福だったはずの自分が、なぜ死んだのか?実は自殺ではなく、殺されたのではないか?自らの死の謎を追い求める中で、 彼は生きる意味、死んで行く意味、そして幸福の意味を知る──。
<新刊書籍のご案内>
なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?
これからを幸せに生き抜くための新・資本論
人は、経験を通して世界を創造する。
お金は、その創造の一要素でしかない。
将来の“正解”が見通せない今、誰もが、ぼんやりとした不安を抱えて生きています。その大きな原因は「変化が重なり、先がよめないこと」。なかでも、グローバル化やIT化によって最も大きく変化したもののひとつが、金融、「お金」のあり方でしょう。「お金」の変化を整理し、どうすれば幸せをつかめるのか、経済的に生き抜いていけるのか、考え方や行動様式をまとめた、未来を考えるための土台を固めてくれる新「資本論」です。