新NISAは「早めの利益確定」がオススメ!? その理由とは?
総務省の調査によれば、老後1か月の生活費は、60代の世帯で約30万円、70代以上の世帯で約25万円かかると言われている。仮に90歳まで生きるとすれば、60歳からの30年間で9600万円が必要になる(30万円×12×10+25万円×12×20)。病気や介護といった問題も無視できない。
本連載は、終活や相続に関するノウハウを紹介し、「お金の不安」を解消するものだ。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。この度、5000人の声を集めたエンディングノート、『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を出版する。銀行口座、保険、年金、介護、不動産、NISA、葬儀といった観点から、終活と相続のリアルをあますところなく伝えている。お金の不安を解消するためのポイントを聞いた。
新NISAの意外なデメリットとは?
本日は「投資と終活」についてお話しします。年末年始、家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
投資家の終活は、「見切り千両」「利食い千人力」を念頭に、値動きの激しい銘柄は早々に利益確定し、値動きの少ない安全資産のみにしておくのがオススメです。
2024年、新NISAがスタートしましたが、実はNISAには所得税の特例制度である損益通算と繰越控除が使えないというデメリットがあるのをご存じでしょうか?
損益通算とは、例えばA株式で100万円の売却損を出してしまった場合、B株式で発生した売却益と相殺できる制度です。そして、その年のうちに相殺しきれなかった売却損を、向こう3年にわたって繰り越すことができる制度が繰越控除です。
この2つは、NISA口座で運用している場合、使うことができません。「儲けが出た場合は非課税となるが、損失が出た場合は損益通算ができない」という性質を鑑みると、NISAの本質は、特定口座(一般口座)で運用するよりもハイリスクハイリターンだと言えます。
またNISAで運用中に、その方が亡くなると、その亡くなった時点の価格で相続人が相続(承継)するため、含み損が切り捨てられてしまいます。
こんなときに損をします!
例えば、父が100万円で買った株式が40万円まで値下がりしている時に父が亡くなると、相続人はその時の価格である40万円で取得したことになるため、株価が元の100万円に戻ってから売却した場合でも、差額の60万円に税金がかかります。
一方で特定口座や一般口座で運用していた場合には、相続の時の価格は関係なく、子どもも100万円で株式を取得したことになるため、100万円で売却した場合には税金がかかりません。
結果として、NISAで運用するよりも、特定口座(一般口座)で運用していたほうが、税金的にメリットとなることもあるのです。こういった事態を避けるためには、NISA口座で含み益が出ている銘柄は、早々に利益確定をしましょう。
また、含み損が生じた時でも、相続人に引き継ぐことのできる特定口座(一般口座)で運用するのも一つの手です。証券口座が複数ある方は、銀行口座と同じように、受け継ぐ相続人ごとに口座を遺しておくと便利です。
年末年始が近づいてきました。終活や相続、または不動産について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を一部抜粋・編集したものです)