スマホで電話する中年ビジネスマン写真はイメージです Photo:PIXTA

夜の街で展開される「ナイトビジネス」は、客の感情を巧みにとらえるサービス業である一方、法規制の境界線上に立つビジネスでもある。歌舞伎町のトラブル対応に奔走する若林翔弁護士によれば、性的サービスをめぐる違法行為や、それを口実にした金銭トラブルは後を絶たない。その一方で、法令遵守を徹底し、クリーンな経営を貫こうとする事業者も存在するという。※本稿は、弁護士の若林 翔『歌舞伎町弁護士』(小学館)の一部を抜粋・編集したものです。

デイタイムビジネスと
ナイトビジネスを隔てる価値観

 ナイトビジネスは、なぜ儲かるのか。太陽が輝いている時間帯にお金を稼いでいる人たちからしばしば聞かれる。私の返答はそれほど複雑ではない。「具体的な商品ではなく、抽象的なサービス・客の感情を左右するようなサービスを売っているから」と、伝える。

 もう1つ、デイタイムビジネスとナイトビジネスを隔てる価値観として、「個人の自由」にどれだけの重みを持たせるか、という線引きもあるかもしれない。

 昨今、支払い能力を超えた売掛け(ツケ払い)で人生を棒に振った客の話が、メディアで取り上げられることが増えた。こうした事案を扱う記事にはたいてい、酒屋では数万円で売られているシャンパンが、ホストクラブでは40万、50万円といった法外な価格で売られている、という批判が混ぜ込まれている。これは如何なものか。

 私はむしろ、記事に対して醒めた眼差しを向けたくなってしまう。支払い能力を大きく超えた金額の売掛けには問題はあるが、酒やそれに伴うサービスの価格設定は基本的には自由でいいはずだ。

 第一に法外とは「法律に反している」という意味だが、純然たる民間事業者の値付けを規制する法律は存在しない。