「経営学の父」と呼ばれるのは誰か、あなたは即答できますか?
その名は――ピーター・ドラッカー。
彼が残した言葉は、時代を越えて世界中の経営者やビジネスパーソンの指針となっています。なぜ没後20年近く経った今も、ドラッカーは読み継がれ続けるのか。
『かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら』の著者である吉田麻子氏に、現代にこそ響くドラッカーのメッセージを伺いました。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局 吉田瑞希)

【ドラッカーが語る】リーダーが「絶対に」やるべきこととは?Photo: Adobe Stock

リーダーが「絶対に」やるべきこと

――リーダーになる人が「絶対にやるべきこと」はありますか?

吉田麻子(以下、吉田):ドラッカーは著作『マネジメント』でこういっています。

「リーダーシップとは人を惹きつけることではない。惹きつけるだけでは扇動者にすぎない。友だちをつくり、影響を与えることでもない。それでは人気とりにすぎない」

前回の記事(「人が去っていくリーダー」の特徴・ワースト1)で解説したように、リーダーに必要なのはカリスマ性や煽動ではないのです。

では具体的に、ドラッカーはリーダーシップとはどのような仕事であるとしているのでしょうか。

『マネジメント』ではこう続きます。

「リーダーシップとは、人のビジョンを高め、成果の水準を高め、通常の限界を超えて人格を高めることである。そのようなリーダーシップの基盤として、行動と責任についての厳格な原則、成果についての高度の基準、個としての人と仕事に対する敬意を、日常の実践によって確認していくという組織の精神に勝るものはない」

成果中心の精神とは

吉田:この文章は『マネジメント』第36章「成果中心の精神」の中でリーダーシップについて書かれている部分からの引用です。

この章でドラッカーは、「成果中心の精神とは、投入した以上のものを生み出すことである。それはエネルギーを創造することである。そのようなことは機械では起こらない。エネルギーは、保存はできても創造はできない。投入した以上のものを得られるのは、精神の世界においてだけである」といっています。

リーダーが日々確認すべき三つの原則

吉田:組織の焦点を成果に合わせ、その成果の基準を高くもち、一人ひとりの強みを引き出し、他の者の助けとする――といった“精神”に基づき、

① 行動と責任についての厳格な原則
② 成果についての高度の基準
③ 個としての人と仕事に対する敬意

この3つを日々のリーダーとしての仕事の中で確認していくことが重要です。

つまり、リーダーがやったほうがよいことは

・ 自分はリーダーとしての行動に責任をもち、一貫性があるか
・ 組織のよりよい成果を求めているか
・ 一人ひとりのメンバーに対する敬意、仕事に対する敬意をもっているか

と自らに日々問うところから始まるのではないでしょうか。

そして何より、リーダー自身がその問いにまっすぐ向き合おうとするとき、変化が生まれはじめるのだと思います。

真摯さとは、声高ではなく、日々の一つひとつの行動に宿る、もっとも静かで揺るがないリーダーシップといえます。