「結果を出す人」は、何を考えているのか? それを明らかにしたのが、プルデンシャル生命で伝説的な成績を残したビジネスアスリート・金沢景敏さんの最新刊『超☆アスリート思考』です。同書で金沢さんは、五輪柔道3連覇・野村忠宏さん、女子テニス元世界ランキング最高4位・伊達公子さん、元プロ野球選手・古田敦也さん、元女子バドミントン日本代表・潮田玲子さんほか多数のレジェンドアスリートへの取材を通して、パフォーマンスを最大化して、結果を出し続ける人に共通する「思考法」を抽出。「自分の弱さを認める」「前向きに内省する」「コントロールできないことは考えない」「やる気に頼らない」など、ビジネスパーソンもすぐに取り入れることができるように、噛み砕いて解説をしています。本連載では、同書を抜粋しながら、そのエッセンスをお伝えしてまいります。
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「敗北」「ミス」「失敗」こそが、トップアスリートをつくる
トップアスリートとは、「勝ち続けてきた人」である――。
みなさんは、そう思っていらっしゃるかもしれません。
たしかに、彼らは、誰よりもたくさん「勝った」からこそ、トップアスリートになったのは事実です。しかし、その栄光の裏側には、数えきれないほどの敗北、ミス、失敗が存在しているのも事実。むしろ僕には、こうしたネガティブな経験こそが、彼らをトップアスリートたらしめたように思えます。
実際、彼らの多くは、キャリアの最初期から先頭を走ってきたわけではありません。
むしろ、「勝てない」時期を過ごすなかで、数知れず悔しい思いをしてきた方が多いように思います。
たとえば、オリンピック3連覇を果たした柔道の野村忠宏さんは、身体が小さかったこともあり、中高時代は県大会をなかなか勝ち上がれない時期を過ごされていましたし、テニス界のレジェンドである伊達公子さんも、中学時代に所属していた名門テニスクラブでは“劣等生”だったと話されています。
では、ほかにもたくさんいたであろう「勝てない選手」のなかから、なぜ、彼らが抜きん出た存在へと育っていったのでしょうか?
もちろん、そこにはさまざまな要因が存在していますが、これだけは共通していると思うポイントがあります。それは、敗北、ミス、失敗と向き合う姿勢です。一切のごまかしなく、自分の失敗を見つめることによって、それを乗り越える「道」を見つけ出すまで徹底的に考え抜く。そのプロセスを繰り返すことによって、驚くほどのスピードで成長していくのです。
「失敗」から逃げずに、「前向きな内省」を突き詰める
その典型が伊達公子さんです。
伊達さんは、試合に負けたときは無口になって、落ち込むだけ落ち込んで、その感情を無理にごまかそうとはしなかったそうです。
そして、驚くべきことに、伊達さんの脳内には試合中のすべてのプレーが鮮明な映像として流れ続け、それを見つめながら、「なぜ、あのようなプレイをしたのか?」「何が悪かったのか?」「何が足りないのか?」などと延々と自問自答を続けたと言います。
それが、1日で終わることもあれば、3日続くこともあれば、1ヶ月続くこともある。その間、自分を責めるわけでもなく、後悔するわけでもありません。ただひたすら、「失敗の原因」「自分の弱点」を追求して、それを「克服する方法」を考え続ける。つまり、「未来につながる模索」を続けるのです。
これは、10代の頃からの習慣だそうです。
当時のコーチは、伊達さんがミスをしても、「こうしなさい」と教えることは決してなく、伊達さんが自分で「答え」に辿り着くまで、ひたすら問いかけを続けたと言います。
コーチ 「今、ボールを打ったとき、何が悪かった?」
伊達さん 「打つのが遅かったからです」
コーチ 「なぜ、遅かった?」
伊達さん 「ちゃんと構えてなかったからです」
当初、伊達さんは、コーチが教えてくれないことに不満を感じていたそうですが、経験を重ねることで、自分の頭で「失敗の原因」に気づくからこそ、「ちゃんと構える」というプレイが定着して、自分が「強くなる」ということを理解。そして、うまくいかないときには、自分の頭で「失敗の原因」と「克服する方法」を考え抜く習慣が身についていったといいます。
だから、伊達さんは、「試合に負けたことは、課題を与えられたということ」と、失敗を非常に前向きにとらえていらっしゃいます。
もちろん、イヤなことはすぐに忘れて、気持ちを切り替えて前に進むということではありません。そうではなく、失敗から逃げずに、「答え」が出るまで、とことん突き詰める――そんな「前向きな内省」を徹底的に究めるということ。だからこそ、伊達さんは世界ランキング4位までのぼり詰めるほどの成長を遂げられたのです。
安易な「ポジティブ・シンキング」に逃げない
伊達さんの姿勢には、失敗を乗り越えるエッセンスが詰まっています。
ここでは、次の三つを指摘しておきたいと思います。
1)安易なポジティブ・シンキングに逃げない
イヤな気持ちをなんとか切り替えるために、失敗から目をそらすのは本末転倒。それよりも、落ち込んだままでもいいから失敗を直視するほうが、よほどポジティブな結果につながります。
2)自分に矢印を向ける
失敗を環境や他人のせいにしている限り、成長することはできません。もちろん、自分だけが100%悪いわけではないことも多いですが、その場合でも、環境や他人にフォーカスするのではなく、伊達さんが「なぜ、あのようなプレイをしたのか?」「何が悪かったのか?」「何が足りないのか?」と自問自答したように、あくまでも自分に矢印を向けることが大切。
3)失敗を「成長の機会」ととらえる
自分の頭で「失敗の原因」と「克服する方法」を突き詰めることができれば、それ以降の成功確率は確実に上がります。失敗に学ぶことができれば、それはすでに失敗ではなく、成功へのワンステップだったことになるのです。
僕の犯した「最低の失敗」
これは、ビジネスでも同じです。
僕自身、プルデンシャル生命時代に犯した「最低の失敗」によって、自分の営業スタイルを刷新したことがあります。僕にとっては苦しい経験でしたが、その失敗に学ぶことで営業マンとして劇的に成長することができたのです。
プルデンシャル生命に入って半年が過ぎた頃のことです。



