米連邦準備制度理事会(FRB)が今年9月に政策金利の引き下げを開始し、通常より大幅な0.5ポイントの利下げを敢行した際、それを主導したジェローム・パウエル議長は、危機感を抱いているというシグナルを意図せず発することにはならないと、懐疑的な高官らを安心させなければならなかった。
FRB高官らは今、もう一つの転換点になりそうな状況に直面している。FRBは11月に0.25ポイントの追加利下げを実施した。投資家の間ではFRBが今週、3会合連続の利下げに踏み切るとの見方が大勢だ。
労働市場の弱さが和らぎ、インフレ率がFRB高官らの9月時点の予想よりもやや高くなっている兆しがある中で、パウエル氏はどのような「ギア」を選ぶべきか模索している。FRB内では、利下げを続けることを懸念する高官もいれば、過去2回の利下げを強く支持したものの確信が薄れている高官もいる。今週の選択肢の一つは、0.25ポイントの利下げを実施するとともに、新たな経済見通しで、利下げペースを減速させる用意があると強く示唆することだ。
2018~24年にパウエル氏の上級顧問を務めたジョン・ファウスト氏は「現時点では、利下げも据え置きも正当化できる」と話す。FRB高官らが示す政策金利見通しは、「12月会合での政策判断そのものよりも重要」になる可能性が高いという。
政策金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)は、住宅ローンやクレジットカード、自動車ローンなど、経済全体の借り入れコストに影響する。利上げは雇用・支出・投資を抑制し、利下げは逆にそうした活動を刺激する。しかしこれらの効果は、経済学者が言うように「長く不安定な時間差」を伴うため、中銀が利上げ・利下げの効果が行き過ぎ、あるいは不十分と判断できるまでに、1年以上かかる可能性がある。