ひとりでは高い目標の達成は困難
チームでのコラボが重要
高い目標を達成することは、ひとりでは困難です。「頑固な個人主義」の考え方に固執していると、自分の能力の範囲内でのアウトプットしかできません。個性や得意分野を生かしたチームで取り組むからこそ、目標を達成できるのです。そういった意味では、デクは仲間にも恵まれました。
ヴィランの黒幕として君臨し続けるオール・フォー・ワン(AFO)は、他者の個性を奪い、自分の個性にしてしまう能力を持っています。先述したOFAは、元々はAFOから派生した能力であり、AFOはOFAの個性を自分のものにしようと、ヴィラン連合トップの死柄木弔(しがらきとむら)を利用してデクを狙います。
AFOたちが攻勢を強め、街中にヴィランが跋扈(ばっこ)すると、市民は強固な防備を誇る雄英高校に避難します。狙われているデクは、自分がいると周りに迷惑をかけてしまうと考え、雄英高校を出てひとりでヴィランと戦います。そんなデクを、1年A組のクラスメイトは連れ戻す。ところが、市民は自分たちに危険が及ぶのではないかとパニックになり猛反発します。そこでデクに好意を寄せるクラスメイトの麗日お茶子(うららかおちゃこ)が拡声器を手に、市民に向かってこう訴えます。
「特別な力はあっても!! 特別な人なんていません!! 泥に塗れるのはヒーローだけです!! 泥を払う暇を下さい!!(中略)緑谷出久は力の責任を全うしようとしているだけの――― まだ学ぶ事が沢山ある―― 普通の高校生なんです!! ここを彼のヒーローアカデミアでいさせてください!!」
その悲痛な叫びが市民を動かし、「俺たち いつまで客でいるつもりだ?」とみんなが当事者意識を持つようになりました。まさにチームに一体感が生まれた瞬間です。
デクの休息後、最後の戦いのための作戦会議を実施。敵の部隊を分散して戦力を削ぐことで、デクにAFOとの最終決戦に集中させることにしました。必ずしも思うようにはいかず、すでに個性を失っているオールマイトがAFOに殺されかけましたが、爆豪が救出してAFOを爆破。最後にデクは、OFAの能力を取り込んだ死柄木と戦います。デクは苦戦しますが、ボロボロになった仲間たちが駆けつけ、彼らの手を借りることで、なんとか死柄木を倒したのでした。
デクは圧倒的な力を持つヒーローではないため、仲間とのコラボレーションが必要でした。その戦い方は、会社組織においても参考になります。それは、デクだけでなく、1年A組をはじめとする雄英高校の全員が主役であるということ。メンバーそれぞれが得意分野、個性を持ち寄ることでシナジーが生まれ、高い目標を達成することができるのです。
名郷根 修 著