モスクワ郊外には超高級住宅街ルブリョフカがあり、メドベージェフはその住宅街の大邸宅を自ら運営する慈善団体の名前で登記していた。その住宅街には官僚やオリガルヒがこぞって暮らしているが、メドベージェフの団体に大邸宅を贈ったのが、オリガルヒ(編集部注/ソ連崩壊に続くロシア経済の民営化を通じて、1990年代に急速に富を蓄積した新興財閥のことを指す)の一人、アリシェル・ウスマノフである。調査を進めるうちに、思いがけずそのウスマノフ自身も話題の人物になっていた。
私が見たことがないような奇妙な動画を録画したのが、ウスマノフだったのだ。彼はその動画を自ら「I Spit on You, Alexei Navalny!」(お前に唾を吐いてやる、アレクセイ・ナワリヌイ!)と名付けていた。その動画では、世界屈指の大富豪ウスマノフが、自ら所有するあの有名な6億ドルの豪華クルーザー「ディルバー」で言い放っている。ナワリヌイとは違って、自分は「幸せ者!」、ナワリヌイは「負け犬」で「馬鹿野郎」だと。
抗議デモのライブ配信中に
警察官が突然乱入
メドベージェフ自身、私たちの調査に対して、その大富豪と似たり寄ったりの奇妙な反応を示した。加工肉工場タンボフ・ベーコンを訪ねたとき、突然その場で記者会見を開き、私たちの調査を「ナンセンス、真っ暗闇、まるでフルーツコンポート」と意味不明なコメントをしたのだ。その一方で、別荘やブドウ畑や慈善団体をどこから手に入れたのかは一切説明しなかった。
それどころか、私が私利私欲のために汚職調査をしていると非難したかと思えば、大統領選で「投票してもらおうと恥知らずな行為に及んでいる」とも非難したのだ。私が積極的に選挙運動を始めてから、そのころまでに4ヵ月近く経過していたことを考えると、メドベージェフの発言は特に気にするような話ではなかったが。