“在宅介護”の限界は
――在宅介護を希望する場合の準備は?
田村:在宅介護の場合も、ケアマネジャーを見つけることが第一歩です。入院している病院が地域内であれば、病院がケアマネの情報を持っています。地域包括ケアサービスを利用して、自治体が紹介するケアマネジャーを通じて段取りを組むのも有効です。どのような介護を受けたいのかという希望はどんどん言ったほうがいいとは思いますが、意に沿ったようなサービスを見つけるのは現実的に難しいでしょうね。
自宅へ戻った場合は地域密着型サービスというのもあります。定期巡回で自宅にきてくれて、デイサービスもセットで利用できて、泊まりも利用できるサービスもあります。小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護(看多機)みたいな、必要なところだけ自宅にきてやってもらうっていうサービスもあります。そういうサービスの受け方ができれば、要介護度2,3など重くなっても、なんとかやりくりできるケースはあると思います。
――夜間対応が必要な場合は?
田村:夜間対応は在宅介護の最大の課題です。家族が同居していればある程度対応可能ですが、一人暮らしでは難しい。24時間対応の定期巡回サービスを提供する拠点は全国で1300カ所程度しかなく、ほぼ都市部に限られています。要介護2でも夜間対応がなければ自宅介護は厳しい。要介護3以上ではほぼ不可能です。
――在宅介護だと、介護保険でカバーできる範囲には限界がある?
田村:そうです。要介護3以上になると介護保険の範囲を超えることが多く、「特別養護老人ホーム」や「介護付き有料老人ホーム」を選ぶほうが現実的です。以前、月額100万円以上を自己負担して住宅型有料老人ホームに住む要介護4の方を見たことがあります。本人がその場所に強いこだわりを持っていましたが、負担は非常に大きい。
“認知症”になったらどうする?
――介護保険サービスを利用できる施設について改めて教えてください。
田村:「特別養護老人ホーム(特養)」「老人保健施設(老健)」「介護療養型医療施設(介護医療院)」の3施設です。
特養は生活の延長を目的とし、医療ケアは限定的。嘱託医が1名ほどいることが多いですが、緊急時対応は難しいです。療養を目的としている施設です。
老健はリハビリを通して自宅復帰を目指します。基本的に90日間から3ヵ月間を目安にして自宅へ戻るための施設で、医療法人が経営しています。リハビリを医療がバックアップしてやっていきます。
介護医療院は病気や慢性疾患がある人向けで、医療ケアに対応できます。元々は療養病床、老人病院のような建付けのものが医療院に変わったものです。復帰目的というよりは、慢性疾患がある人がそこへ入るイメージです。
――グループホームについては?
田村:グループホームは認知症の診断を受けた人しか入れない認知症専用施設です。1ユニット9人として、最大3ユニット、入居者数が27人と小規模です。このため、認知症の人がそこへ行っても安心して生活できるというような、そういう建付けでできました。ただし、認知症ケアの教育プログラムをしっかりと整備できていないホームも多いのが現状です。
――しっかりやってない?
田村:認知症の教育プログラムを持っていない、要は職員に認知症とはなんたるかを教育できていない施設もあります。教育ができなければ研修もできない。研修ができなければスタッフが認知症対応の仕方を理解できないので、不都合が生じることがあります。最悪の場合、夜間1人でケアしているスタッフが虐待に走るような事態も起きました。
私はこれまでスウェーデンやデンマークで30年以上認知症ケアについて学んできました。認知症のケアプログラムをどう整えるか、認知症療法の種類をどのように持つかが非常に重要です。施設選びでは、こうした点についても確認するべきです。
株式会社タムラプランニング&オペレーティング代表取締役。「高齢者住宅支援事業者協議会」事務局長
1974年に大学卒業後、ケア付き高齢者マンション開発会社に入社。神奈川県横浜市などにケア付き高齢者マンションの開設を手掛ける。1987年に株式会社タムラ企画(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立、代表取締役に就任。高齢者住宅の事業計画立案及び実施・運営・入居者募集等、一連の実務に精通したコンサルタントとして活躍。市町村の介護保険事業計画などの福祉計画策定をはじめ、老人福祉施設や有料老人ホームの開設コンサルや経営改善コンサルに力を入れ実践している。テレビ、新聞、雑誌など各種メディアへの出演実績多数。