並んだ歯ブラシ写真はイメージです Photo:PIXTA

蒸し暑い夏は、夜にアイスクリームやかき氷を食べる人も多いでしょう。「寝る前に念入りに歯を磨けば、虫歯にはならないはず」と思っていませんか?ところが、それは勘違い。「砂糖を食べるとなぜ虫歯になるか?」からひもといて、虫歯になる本当の原因と、虫歯予防の最新情報を紹介します。(歯科医師 宮本日出)

甘いものを食べた後、口の中で起きていること

「食べたら歯を磨く!」と呪文のように子どもの頃から言われ続けた人は少なくないはずです。特に、夏休みの時期は砂糖を多く含んだお菓子やアイスクリームを食べる機会が増えます。だから念入りに歯を磨く必要があると思う親御さんは多いです。しかし、歯を磨けばそれで虫歯リスクがなくなり、安心なのでしょうか?

 世界保健機関(WHO)のホームページによると、12歳児の虫歯経験指数は、予防歯科の先進国であるデンマークが0.4本(2014年)に対し、日本は1.4本(2011年)。なんと、3.5倍も多いのです。この差は、もしかして虫歯に関する知識の勘違いが原因かもしれません。

 砂糖の主成分であるスクロースという糖類は、口内の細菌を分解して「酸」に変え、その結果、通常は弱酸性から中性(pH6.8~7)の口内を酸性に傾かせます。歯の表面を覆い虫歯から守っているエナメル質は、ハイドロキシアパタイトと呼ばれるカルシウムでできていて、pH5.5以下になると急激に溶け出します。砂糖を入れた口内はpH5以下になるので、歯の表面のカルシウムが溶け出し、表面が初期虫歯状態(脱灰)になってしまうのです。

 しかし、そのまま虫歯になるわけではありません。守ってくれるのは、唾液の力によるものです。唾液は99.5%が水分でpH6.8ですが、わずかに重炭酸塩が含まれています。これが、口内のpHに変化が起きたとき、正常なpHに戻そうと対抗する力(緩衝能)を持っています。重炭酸塩の力によって、通常は2~3時間かけてpHが中性に戻り、脱灰した歯はカルシウムを取り入れ(再石灰化)修復されます。

 このバランスを保ち、脱灰と再石灰化を繰り返していれば虫歯には進行しません。しかし、バランスが崩れ酸性状態が続くと本格的な虫歯に移行します。バランスを崩すのが、おやつなどを食べる間食です。間食をすると、食事で酸性になった状態を中性に戻そうとしている途中でまた酸性へ逆戻りし、歯が修復するチャンスをなくします。修復できない状態が何度も繰り返され、虫歯に至ってしまいます。