セラミックは接着という技術を用いますが、銀歯は経年劣化するセメントというものを使用します。そのため10年後の予後は飛躍的に違うと、一般的には言われています。私の感覚だと、銀歯の8割くらいは外した後はセメント劣化により虫歯になっている印象です。

 岡山大学歯学部森田学教授のチームが再治療となった約3000本の銀歯を対象に平均使用年数を調査した研究があります。なんと、「インレー」=5.4年、「アンレー」=8.6年、「クラウン」=7.1年です。

 銀歯のインレーで再治療になった原因で一番多かったのは虫歯の再発でした。銀歯と天然歯の隙間から虫歯菌が侵入して、虫歯を再発させたからと考えられます。

重度の難症例であれば
高額な自由診療は必須

 難症例の患者さんの治療費は、高額になるケースがほとんどです。

 難症例の場合、虫歯や歯周病が原因で歯がない、もしくは残っている歯は重度の歯周炎です。ほとんど天然の歯がなく、被せ物が必要となり、さらに歯列不正などの問題が合併しています。歯がない部分にはインプラントが必要かもしれません。またインプラント治療をするためにはまず、歯周炎を治さないといけません。

 歯周炎は歯の周りの骨が溶かされる病気です。ここに対しては、歯周炎の特殊な手術をしなければなりません。歯列不正があり歯並びが悪いと適切な位置に噛み合わせを作ることができません。などなど、さまざまな問題が合併しているので非常に複雑になります。治療期間も短くて1年、長い方だと4年かかる場合もあります。

 また、ほとんど噛み合わせを作り直すような治療の場合、保険の銀歯では対応ができません。銀歯はセラミックのように作成する過程で、材料を足したり引いたりすることはできません。噛み合わせを作り変える治療には、精密な咬合の接触点を付与する必要がありセラミックは必須オプションになります。1本十数万円のセラミックが28本必要なら、単純計算でセラミックのみで300~400万円はかかってしまいます。