税務署が自宅に来て、亡くなったお父さんのことをいろいろ聞いてくる中で、専業主婦だった奥様の預金通帳について質問されます。「たくさんお金が入ってますけれども、それはどのように築き上げたんですか?」と聞かれた時、奥様が「主人が私の知らないうちに積み立てをしてくれていました」と答えたらどうなるでしょうか。

 そうすると、税務署は「奥様の預金は実質的にはご主人の財産。よって相続税を追徴課税します」と言ってくる可能性があります。通帳は奥様名義であっても、実質的には亡くなったご主人のものということです。こういった形で相続税を追徴課税されることは非常に多いのです。

名義預金に注意! ポイントは?

 こうした名義と実質的な所有者が異なる預金を「名義預金」といいます。名前を変えるだけではその人のものにはならず、真の所有者は誰なのかが問題になります。小学生の頃、隣の席の子のかっこいい筆箱を取って名前を書き換えたとしても、その筆箱が自分のものになるわけではない、という例えで考えるとわかりやすいでしょう。

 では、税務署はどういう点を見て「名義預金」と判断するのでしょうか。ポイントは2つあります。

 1つ目は「両者の認識の合致」です。贈与契約というのは、あげる側の「あげます」という意思表示、もらう側の「もらいます」という意思表示、これら2つが揃って初めて成立します。民法549条には、贈与は当事者双方の意思表示によって成立すると定められています。つまり、「あげる・もらう」の約束がきちんとできていたかどうかがポイントです。先ほどの事例では、ご主人は積み立てていたかもしれませんが、奥様はその存在自体を知らなかったので「もらいました」という意思がありません。よって贈与契約は成立しないことになります。

 2つ目は「管理処分権限の移行」、つまり、そのお金をもらった人が自由に使える状態だったかどうかです。贈与で財産をもらったなら、自分で自由に使えて当然です。自由に使えないのであれば、実質的には贈与されていないと判断される可能性があります。

 先ほどの事例のように、妻が知らないうちに妻名義の通帳で積み立てをしていた場合は、100%アウトです。奥様が存在すら知らなかった以上、贈与契約が成立していないため、名義預金として扱われます。では、どうすればいいのでしょうか。対策と注意点を解説します。