2期連続で7000億円を超える巨額の最終赤字を計上したパナソニック。赤字の元凶となったテレビなど消費者向け家電から、事業の核をBtoB(企業向けビジネス)にシフトするという方針を打ち出している。「週刊ダイヤモンド」2013年5月18日号はそんなパナソニックの「最後の賭け」の先行きを徹底検証している。一方で、かつてパナソニックの家電販売を支えてきた全国の地域販売店は、こうした状況にどう立ち向かっているのか。その現場を取材した。(「週刊ダイヤモンド」編集部・深澤 献)
京都府宇治市に住む安田民代さん(仮名・77歳)の自宅は、パナソニック製品で埋め尽くされている。照明器具や家電製品は言うに及ばず、トイレ、システムキッチン、床暖房……。すべて近所のパナソニックショップ「マキノデンキ」で買ったものだ。
それだけではない。家のリフォームもマキノデンキに頼んだ。2005年に股関節の骨折で入院したのだが、退院に合わせて自宅の和式トイレを、フタが自動開閉するパナソニック製の温水洗浄便座「ビューティートワレ」に替えたのがきっかけだ。その3年後、玄関やリビングルームの内外装など各所をリフォームし、これまでの暮らしがウソのように住みやすい家に生まれ変わった。
「みんな“ナショナルさん”のおかげ。思い切ってお金を出したら、楽な生活ができるのよって友達にも薦めてるんです。こんなにいろいろ楽なもんがあるのに、使わなかったら損やん」と、安田さんはうれしそうに話す。
リビングルームの掛け時計は標準電波を受信して誤差を自動修正する「電波時計」だが、キッチンの時計は普通の時計なので、電池交換や時刻合わせはマキノデンキの販売員にやってもらうことにしている。季節ごとのストーブの出し入れもマキノデンキ頼みだ。「みんな気持よく来てくれるし、家の前を通った時には『何かありませんか』と声をかけてくれるんです」(安田さん)。
「あなたの街のでんきやさん」として親しまれている「パナソニックショップ」。高度成長期にはパナソニック製品の最大の販売ルートだったが、量販店との競争激化やインターネット販売の台頭、さらに後継者不足などの問題もあり、ピーク時には5万店あったのが現在は約1万8500店に減少している。パナソニック全体の売り上げに占める地域専門店の割合は2割程度だ。
とはいえ、裏を返せば、今残っている地域店は激戦を勝ち抜いてきた“エリート”と言える。パナソニックコンシューマーマーケティングの地域電器専門店部門(LE社)・濱谷英世社長は、「今残っている地域店は量販店を気にしていない。値段ではなく、サービスで決める顧客をつかんでいる」と語る。