「日本は変わらなければいけないと思います。もちろんバックグラウンドは変えられませんし(日本での)自分たちのバックグラウンドを誇りに思います。ただ日本にとっては柔軟性を持って海外から人材を受け入れることが極めて重要になるでしょう」
この発言と「移民受け入れ」がまったく異なることは言うまでもない。例えば今年3月、岸田政権は「特定技能」外国人の受け入れ枠の上限をこれまでの2倍超となる82万人に設定、新たに自動車運送業、鉄道など4分野を追加した。これは日本政府としては「海外から人材を受け入れる」ということに過ぎず、「移民受け入れ」ではないというスタンスだ。
40年前から日本で生活して日本国籍を有しているラジュ会長CEOはもちろんこの2つの違いはよく理解している。本当に「日本も移民をじゃんじゃん受け入れろ」と思っているのなら、移民(immigration)という言葉を使うはずだが、そうしていないということは、日本政府が推進している「海外から人材を受け入れる」という政策をさらに加速すべきだと言っているに過ぎないのだ。
「欧州の問題=世界の問題」
という身勝手なバイアス
さて、そうなると「なぜ本人が言ってもいないことがニュースになるんだ?」という疑問が浮かぶだろう。「PV狙い」「翻訳ミス」などいろんな可能性が浮かぶだろうが、筆者から言わせれば、ここにこそ「オールドメディア」ならではという構造的な問題がある。
今回の亀田製菓会長の「移民拡大発言」を報じたのは、AFP通信。フランス・パリで1835年に設立されたハヴァス通信社を前身とする世界最古の通信社で、海外支局を150カ国以上に持つ、世界的報道機関である。
そう聞くと「そんな立派なところなら本人が言ってもいないことを報じるわけがないだろ!」と思うかもしれないが、それが勘違いのもとだ。どんなに歴史があろうとも、どんなに支局がたくさんあろうとも、報道というものは人間がつくっている以上、そこには必ず「意図」というものが介在してしまう。そのため悪意なく、取材した事実を自分たちの都合のいいようにねじ曲げてしまう傾向があるものなのだ。