2024年の通商白書には「輸入シェアが50%以上を特定の国・地域に依存している品目の数」の中で、G7、ドイツ、アメリカ、日本で中国にシェア50%を依存している品目が比較されている。G7は361品目、ドイツは221品目、アメリカは567品目というのに対して、日本は1406品目となっている。

 この深刻な中国依存は、中国で生産した「梅の香巻」を輸入しているだけの亀田製菓を叩いたところでなにも変わらない。しかも、不買運動が成功して亀田製菓の売り上げが下がれば事態は悪化する。会社を守るためにはコストカットをしなくてはいけない。これまでは国産や米国産で頑張っていた製品も、安さや調達しやすさから中国産への切り替えが進んでいく恐れがあるのだ。

「そういう細かい話ではなく、日本人のソウルフードである米菓で国産米を使わないということが問題なのだ、そんなこともわからないのか」と憤る人もいるだろうが、そこまで日本の伝統分野での「中国産」排除が必要だという方は、これから数日後に日本国民が大挙して訪れる「神社」へいくこともボイコットしなくてはいけない。

 農林水産省の2021年のデータでは、日本の神社の修繕・保存に欠かすことのできない「漆」の国産はわずか9%で、91%は外国産でほとんどが「中国産」なのだ。日本古来の八百万の神様が祀られている神聖な場所は今や「中国産」の力なくしては維持できないという現実があるのだ。

「日本を守れ」と柿の種やハッピーターンを不買するのも結構だが、神社で用いる漆を国産化するようにのどを枯らして訴えるというほうがよほど「愛国」なのではないか。

 このように今回の亀田製菓への不買運動は、オールドメディアと一部のSNSユーザーによる「雑な情報操作」にピュアな人々がまんまと乗せられてしまったという印象が否めない。

 しっかりと検証をすることもなく「移民推進とか中国産とかみんな言っているし、懲らしめたほうがいいんじゃね?」というような「ムード」だけで、リンチが始まってしまった。これは評論家の山本七平氏が「空気」と呼んだものではないかと思っている。