SNS戦略を専門とする者ならば、星野さんが「地獄でなぜ悪い」を歌うというトピックスが、それなりにバズるのは簡単に予測できたはずだ。一部の人たちは「許せない」と批判するし、ファンや一般人は「関係ない」と擁護をする。SNSでは「賛否両論の論争」が一番PVを稼ぐのだ。

 しかも、NHKや紅白歌合戦にとってこのトピックスはそこまで大きなリスクはない。星野さんは何も悪いことはしていないし、曲自体も闘病生活の歌詞なので、「ご意見は参考にさせていただきます」くらいで突っぱねることもできなくはない。

 つまり、紅白のデジタル戦略的に、軽いボヤくらいで大晦日まで話題づくりができると踏んだのではないかというワケだ。

 しかし、想定していた以上に批判が盛り上がってしまった。だから、アーティストとしてのイメージ悪化を恐れた星野さんサイドの要望もあって、慌てて方針転換をしたのではないか。

 もちろん、真相はわからないが、もしそうだとしたら目先の話題欲しさに、とんでもない「パンドラの箱」を開けてしまったような気もする。

 あくまで個人的な印象だが、テレビの世界での性加害は他業界の比ではない。「タレントや女優の卵」など強い立場の人のオーダーに従わざるを得ない女性がたくさんいるからだ。

 2025年は本格的に、テレビ業界のあり方が見直されていくかもしれない。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

「星野源さん、紅白歌合戦の楽曲変更」がテレビ業界の「パンドラの箱を開けた」と言えるワケ