相続は誰にでも起こりうること。でも、いざ身内が亡くなると、なにから手をつけていいかわからず、慌ててしまいます。さらに、相続をきっかけに、仲が良かったはずの肉親と争いに発展してしまうことも……。そんなことにならにならないように、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)の著者で相続の相談実績4000件超の税理士が、身近な人が亡くなった後に訪れる相続のあらゆるゴチャゴチャの解決法を、手取り足取りわかりやすく解説します。
本書は、著者(相続専門税理士)、ライター(相続税担当の元国税専門官)、編集者(相続のド素人)の3者による対話形式なので、スラスラ読めて、どんどん分かる! 【親は】子に迷惑をかけたくなければ読んでみてください。【子どもは】親が元気なうちに読んでみてください。本書で紹介する5つのポイントを押さえておけば、相続は10割解決します。
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

“家族全員で話し合え”と言うけれど…
具体的に誰と話せばいいの?

国税(相続税担当の元国税専門官)家族全員で相続の話をすべきだとのことですが、家族といっても具体的に誰と話せばいいのでしょう?
前田(相続専門税理士)国税さんは、自分が亡くなったときに、誰が相続人になるか知っていますよね?
国税 はい。妻と3人の息子たちです。
無知(相続のド素人)えっ、相続人はどうすれば、わかるんですか?
知らないと損!
遺言書がない場合の法定相続人と血族の優先順位
前田 民法で定められた相続人を法定相続人(相続人)といいます。遺言書があれば法定相続人以外でも財産を受け継げますが、遺言書がなければ法定相続人同士で遺産分割協議をして相続財産の分け方を決めます。
相続人になるのは、「(亡くなった)被相続人の配偶者(夫や妻)」と「被相続人の血族」です。被相続人の血族には、次ページのとおり順位があり、第1順位がいなければ第2順位、第1順位も第2順位もいなければ第3順位の人が法定相続人になります。

無知 僕には妻と子ども2人がいるので、僕が死んだら3人が相続人になるということですね。覚えておきます。
“妻だけが相続”は幻想
子どもがいない夫婦に潜む相続トラブルの火種
前田 相続人は、相続における当事者ですから、まずは誰が相続人なのかを把握しなくてははじまりません。けっこう勘違いしやすいのが、結婚していてお子さんがいないケースです。夫が亡くなった場合、「妻がすべての相続財産をもらえる」と思い込みがちなのですが、それは間違いです。
子どもがいなければ、代わりに第2順位である両親か祖父母(直系尊属)が相続人になり、子どもも直系尊属もいなければ、第3順位である兄弟姉妹が法定相続人になります。
国税 そう考えると、妻だけが相続人になるケースって意外と少ないですよね。
前田 はい。ただ、妻からすれば、夫の両親や兄弟姉妹は血のつながっていない他人です。それでも相続の当事者同士になるので、きちんと話し合いをしないとモメやすいです。
独身者の財産は最終的に誰の手に?
知っておくべき特別縁故者の相続ルール
国税 独身で子どものいない人は、どうなるんでしたっけ?
前田 普通は両親が相続人になります。両親が他界していれば、兄弟姉妹が法定相続人です。なので、相続人が誰もいない状況はあまりありません。
ただ、本当に身よりがなかったり、法定相続人の全員が相続放棄をしたりすれば、相続財産は亡くなった被相続人にお金を貸しているような「債権者」に分配されて、のこりを「特別縁故者」や国がもらうことになります。
特別縁故者というのは、簡単に言えば「亡くなった被相続人と特別親しい関係にあった人」ですね。たとえば内縁の配偶者や、介護をしてくれた人などは、家庭裁判所での手続きを経て特別縁故者になる可能性があります。
再婚した親の相続財産はどうなる?
子ども、配偶者、内縁の妻が抱える複雑なルール
無知 へえ。逆に言えば、普通に法定相続人がいたら、内縁の妻とか生前にお世話をした人でも、相続する権利はないわけですね。
前田 そうです。なので、そういう人に財産をのこしたければ、遺言書を書いておくべきです。
国税 再婚した場合はどうなりますか? 実は私の両親は、私が中学3年生のときに離婚して、私は母に引きとられました。父親は再婚したという話を聞いていますが、詳しいことはわかりません。
前田 再婚した場合、新しい配偶者は、当然ながら相続権をもちます。子どもについては、前妻との子どもも、新しい配偶者との間にできた子どもも、同じく相続権があります。
ですから、国税さんのお父さんが亡くなったら、国税さんの兄弟姉妹と、お父さんの再婚相手の家族とで、遺産分割協議をすることになるでしょう。また、再婚相手に連れ子がいたときは、血縁関係にはないので相続権をもたないのですが、その連れ子と養子縁組をしていれば、実子と同じ権利が発生します。
無知 ちょっと混乱してきました……。とにかく、離婚や再婚をした人は、相続人が誰なのかを慎重に確認しておいたほうがよさそうですね。
相続人が誰かちゃんとわかってる?…相続人になるのは「配偶者」と「血族」
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。