アメリカで大きな話題を呼び、多くの読者に新しい視点を与えた『Master of Change 変わりつづける人』(ブラッド・スタルバーグ著、福井久美子訳)が指摘するのは、人生を消耗させる「思考の癖」だ。本稿では、本書の内容をベースに、自分らしい生き方を取り戻すコツを紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

陽気に見えるあの人が特大ストレスを抱えている…ストレスを溜めやすい人の意外な共通点Photo: Adobe Stock

いつも陽気に振る舞う人が、実は大きなストレスを感じている

 職場や交友関係を見渡すと、どんな状況でも陽気でポジティブに振る舞う、前向きな人がいるはずだ。もしくは、「自分はそういう人でいよう」と心がけている人も、少なくないだろう。

 マッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者スタルバーグは、これが危険な生き方であると指摘している。

 欧米社会の人々は、常に幸せでいなければならないという重圧にさらされる。そのような考えは良く言えば見当違い、悪く言えば危険だ。

 

 幸せになるための最悪の方法は、いつも幸せでいようとすること、もっと悪いのは、幸せにならなければと思い込むこと(そしてそれを期待すること)だ。

 

 生きていくうえでは悲しみ、退屈、無気力といった感情を避けられない。それなのに常に陽気でポジティブでいなければならないという考え方があり、言葉にすることもある。こうした考え方を鵜呑みにした人たちの多くは、それが精神的な負担になることに気づいていないのではないか。自己批判や他人へのいらだち、酷評のほとんどは、こうした実現不可能な規範で判断するからではないだろうか。

(P.102~103)

重圧やストレスに強い人の共通点

「もっと幸せな状況」や「より高い理想像」を追い求め続ければ、それが重圧になってしまうというわけだ。体感的に納得できる人は多いのではないだろうか。

 物事がいつも期待通りに進むわけではない。現実とかけ離れた理想を頭の中で描き続けると、現実とのギャップで苦しくなってしまう。

 では、どうすれば、このような精神的負担を減らすことができるのだろう。スタルバーグは次のように言っている。

 2022年の『ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー』誌に、世界各地の7万人超を対象とした研究に関する論文が掲載された。
 

 研究結果によると、変化や困難に何度も遭遇すると予測している人は、身体的にも精神的にもストレスに強いことがわかったという。そのような人は痛みに強く、不屈の精神を発揮しやすく、失敗しても立ち直って前進する可能性が高い。

(P.103~104)

 絶望感と無力感は、うつ病や身体的な衰えに関係している。一方で、有害なほどのポジティブさは、ストレス・ホルモンであるコルチゾールの分泌量を増やし、高血圧、頭痛、不眠症、肥満、その他さまざまな現代病を引き起こす可能性がある(妄想には労力がかかるため)。

(P.110)

 極端な楽天家でもなく、絶望感や虚無感に打ちひしがれることもない。常に現実を冷静に捉え、ニュートラルに生きる人こそが、最もたくましい人なのだろう。

※本稿は『Master of Change 変わりつづける人』より一部を抜粋・編集して構成しました。