人生は変化の連続だ。環境や人間関係の変化に不安を感じたり、「これまで通りでいたい」と変化を拒む経験は、多くの人にとって身に覚えがあることだろう。話題作『Master of Change 変わりつづける人』は、変化に適応するための新しい生き方のモデルを提示した刺激的な一冊だ。最新ウェルビーイング研究をひも解きながら、さまざまな分野で人生の転機を乗り越えた人々のエピソードを描いている。アメリカで大きな反響を呼び、多くの人の心を動かしたこの本がついに日本上陸。ここでは本書から一部を抜粋し、仕事や人間関係が変化する、不安定な環境下で柔軟に適応し、力強く前進するための視点を紹介する。
人生の転機は、実は頻繁に訪れている
世の中を見渡すと、10年に一度は劇的な変化が起きるものだ。たとえば戦争、新しいテクノロジーの登場、社会不安や政情不安、不況、環境危機など、あらゆるものが急激に変化している。
個人レベルで見れば、人生を揺るがす出来事はより頻繁に起きている。
新しい仕事を始める、辞職する、結婚する、離婚する、子どもが生まれる、愛する人を亡くす、病気になる、新しい町へ引っ越す、学校を卒業する、新しい親友と出会う、昇進する、子どもが巣立って家に取り残される、定年退職するなど。
調査によると、大人は平均で36回も「人生を揺るがす出来事」を経験するという。18か月に1回の割合だ[1]。おまけにこの数字に老いは含まれない──多くの人が無益に抗い、拒絶する人生を揺るがす出来事だというのに。
変化と混乱は例外的な出来事だと思われがちだが、実際はどちらも通常の出来事だ。よく見れば、あらゆるものが変化していて、自分も例外ではないことに気づく。人生は流動的なものなのだ。
わたしたちの文化では安定性を求める風潮が強いが、それは絶え間なく変化し続ける現実を反映していない。適切なスキルさえあれば、変化は成長を劇的に後押しする力になり得るという事実も。
科学的な研究によって、わたしたちは変化を経ると強くなって成長することや、行動によって変化を切り抜けられることがわかっている。そしてそのような能力を開発したり、実践したりできるという。本編ではその全貌を解説する。
[1] Bruce Feiler, Life Is in the Transitions: Mastering Change at Any Age (New York: Penguin, 2020), 16.
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人』の内容を一部抜粋・編集したものです。