社員写真はイメージです Photo:PIXTA

上司として部下を持ったばかりの人が直面するのが、リーダー像の問題だ。厳しい上司は嫌われるが、甘すぎればプロジェクトがうまく回らない。そんなときは、若手社員があなたに何を望んでいるかを知る必要がある。令和の今、求められているリーダー像について人財育成コンサルタントの余語まりあ氏が解説する。※本稿は余語まりあ氏『行動傾向分析で磨く 個性を活かすリーダーのコミュニケーション』(同文舘出版)の一部を抜粋・編集したものです。

40代以上が思う理想のリーダー像と
令和に求められるリーダー像は全く違う

 人々は長らく「生存の欲求」「安全の欲求」といった根源的な欲求を満たすために活動をしてきました。仕事は、お金や地位を得るためにするものであり、おいしいものを食べることやいい家を持つことなどが、ほとんどの人の幸福感に直結していました。

 ところが、戦後の何もない状態から見事に復興し、高度経済成長期を経て、今や日本のどこにいても誰もが安心して、食べるものを手に入れ生活できる環境が整えられました。すると私たちの欲求はより高い次元のものに移り変わっていきます。

 人々とのつながりを求める「所属と愛の欲求」、自分を認めたい、認められたいという「承認欲求」、さらに能力を発揮して、自分にしかできないような何かを成し遂げたいという「自己実現の欲求」が満たされることをプライベートでも仕事でも求めるようになりました。就職の際にも、給与や安定性、知名度ではなく、「やりがい」や「自己成長」を軸に会社を選ぶ人たちが増えてきました。

 そのような中、若者たちにとって「自己承認」「自己肯定感」「自己重要感」が大切になっています。この傾向はここ十数年でますます強くなったように感じます。

 その理由のひとつはインターネットやSNSの普及により、他人と自分を比べる機会が増えたことです。

 そして「多様性」という概念が生まれたことも大きく影響しているでしょう。働き方も家庭のあり方も、自分との向き合い方も、すべてにおいて、万人に共通する正解がなくなり、かえって不安を感じたり、幸せを見失ったりしてしまう人も大勢います。

若者の承認欲求が満たされないのは
他己承認になってしまっているから

「自己承認」とは、自分自身の存在や行動を肯定的に受け入れることを指します。自己承認ができている人は、自分で自分の価値を認め、自分の意見や感情を尊重することができます。「自己承認欲求」という言葉がありますが、本来の自己承認は、他者からの評価や意見によって左右されず、自分自身の内面的な価値を認識することに重きを置きます。

 しかし実際には「自己承認」ではなく、「他己承認」を求めてしまう人が多く、いつまでも満たされないままもどかしさを感じたり、逆にインターネットで自分の実力不相応に高く評価されすぎてしまい、現実とのギャップに苦しんだりしている人もいます。